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返さない借金、返せない借金

2019/05/22
五十嵐 敬喜

あたり前だが、借金の効用は収入以上の支出が可能になることだ。しかし借金を返そうとすると、支出を収入以下に抑えざるを得なくなる。逆に借金を返さないと決めたり、返さなくてもよい借り入れができたりしたら、収入以上の支出をずっと続けられるわけだ。

ラフに言って1000兆円あるとされる我が国の財政赤字(借金)だが、我々はそれを一度も返したことがない。借金は返済すれば残高が減るはずだが、残高は一本調子に増え続けている。期限を迎えた国債は借り換えでしのぎ、新しい借金を重ねてきたから残高が増え続けて止まらないのだ。

我々は返す気があるのか。仮にそうだとしても、果たして返せるのか。絶対に無理と断言できる。1000兆円の借金は、いっさい減ることなく増え続けるのは確実だ。借金を減らすためには、歳出を歳入以下に抑えねばならない。それが非現実的であることは明らかだろう。

2019年度の一般会計は、実質借り換え分を別にすれば新規の国債発行額は18兆円。利払い費も除いた歳出総額78兆円のうち実に34兆円が社会保障費だ。この費目の支出がますます増えるのは確実だし、それ以外の歳出を大幅に減らすのは困難だ。歳入も2%分の消費税率引き上げでも騒ぎになるのだから、大幅な増税を断行する政治家など現れそうにない。

戦後最長とされる景気回復が続く中で借金は増え続けてきた。18兆円の赤字を黒字に変えて借金を返済することを想像するなど、およそ不可能と言うべきだ。現実的な目標は国内総生産(GDP)に対する借金残高の比率を徐々に引き下げることだろう。歳出の増加を抑えるのを前提に、経済成長を実現する。令和時代の最大の課題だ。

(「2019年4月18日日本経済新聞・夕刊 『十字路』」より転載)

調査部
研究理事
五十嵐 敬喜

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