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税収不足と財政の不健全化

2019/11/15
五十嵐 敬喜

一国の財政の健全度を示す最も重要な指標は債務残高を国内総生産(GDP)で割った「債務残高比率」だろう。GDPは債務の返済能力の代理変数と言えるからだ。
日本のこの比率が主要国で唯一200%超で、債務残高の絶対値が1000兆円以上であることはよく知られている。債務が膨らんだのは財政赤字を出し続けてきたためだが、その主因は何か。身の丈を超えた歳出を続けたからなのか、歳入が少なすぎたからなのか、どちらだろうか。 経済協力開発機構(OECD)に加盟する36カ国間の比較(2016年)では、日本の「歳出/GDP比率」は39%で24位、「税収/GDP比率」は18%で33位、「税収(含む社会保険料)/GDP比率」は31%で26位となっている。歳出総額は多くはない印象だが、社会保障費以外の支出に限ると15%(29位)とのデータもあり、これを抑えて歳出総額の膨張をこらえてきた事情がうかがえる。
社会保障支出(対GDP比率は24%、13位)の増加が避けがたいとすれば、日本の課題は、歳入、特に諸外国に大きく引けを取る税収をいかに増やすかということだ。そうすると目立つのは個人所得税収の少なさだ。個人所得税の納税者のうち、所得が特定の額から増えたとき、その増分に適用される税率を示す「限界税率」が10%以下の人たちの割合が80%を超す。米国では25%程度、英国では2%程度、フランスではゼロだ。
ただ限界税率が10%以下とは、課税対象所得が330万円以下ということだ。その層の税率を上げるのは難しいだろう。とはいえ高所得層の税率が低すぎるわけでもない。
最も望ましい道は、経済成長を通じて個人所得を大幅に増やすことだが、現実的には間接税や資産課税の一層の増税が見えてくる。

(2019年10月29日日本経済新聞・夕刊 『十字路』」より転載)

調査部
研究理事
五十嵐 敬喜

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