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問われている労働の質

2020/02/14
五十嵐 敬喜

わが国の名目成長率が極めて低いことは2019年12月の本欄でも指摘した(10日付)。00年の水準を100とする19年1~9月期の名目国内総生産(GDP)の水準は、米国が209、欧州連合(EU)が175なのに対し、日本はわずか105だ。わが国だけに見られる特徴は、同期の実質GDPの水準が117と、名目成長率が実質成長率を下回っていることだ。

これがデフレ(=物価の下落)で、「名・実逆転」を生む名目成長率の低迷をデフレのせいにしてきたことが、経済金融政策の空回りにつながったと思う。結局、デフレ脱却さえすれば低成長から抜け出せると考え、物価引き上げにまい進した。特に力を入れたのが超金融緩和と、その副次的効果としての円安の推進だ。しかしうまく機能しなかったことは今や明らかだ。

「名・実逆転」はGDPデフレーターの下落と同義だ。GDPデフレーターは「名目GDP÷実質GDP」で計算する。「生産=支出=所得」とする三面等価の原則があるから「実質生産1単位あたりの名目所得」とも言える。デフレはその増加率がマイナスなのだから、実質生産を増やした割には生産が生み出す所得が増えてこなかったのだ。

一方、わが国で物価が上がらない主因は、サービス価格がほとんど上昇しないことだ。サービス価格の主要部分が人件費であることを考えれば、人が生み出す付加価値が十分に増えてこなかったことがデフレの本質なのだ。

成長率を高めるためには生産性の向上が必要だと言うが「1人が1時間に何個作れるか」が生産性なら、日本は決して引けを取らない。問題は1人あたりの経済活動がどれだけの付加価値を生み出せているか、という意味での生産性が伸びていないことだ。労働の質が問われているのだ。

(2020年1月29日日本経済新聞・夕刊 『十字路』」より転載)

調査部
研究理事
五十嵐 敬喜

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