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事業者の休業補償は必要か

2020/05/18
五十嵐 敬喜

「休業要請するなら補償すべきだ」という議論に異論を挟むのは難しい。売り上げが理不尽なまでに減少した事業者が苦境に陥っていることを我々はよく知っているからだ。ただ国や自治体(公)は打ち出の小づちを持っているわけではない。国(住)民からお金を徴収する権限と、それを国(住)民のために支出する義務を持つのが「公」の役割だ。「公」による補償とは、我々がそれを皆で負担することと同義なのだ。
では補償の財源として、コロナ補償特別税だとか、消費税に特別付加税率を課すべきだという議論がなぜ出てこないのか。増税するなら対象は高所得者だし、あるいは無駄な歳出を切り詰めれば済むということなのか。非常時だから赤字国債で賄うべきだという考え方もあろう。ただそれは、将来世代の所得を我々が今使うことに他ならない。
我々はもともと極めて親切で優しい国民なので「公」の財政で十分な負担を伴わない支出を繰り返してきた。その結果として主要国で唯一、経済規模の2倍を上回る負債を抱えることになった。そんな状況で遭遇したのがコロナ危機だ。経済が尋常でなく落ち込むのをここで支えておかないと、将来世代にとっても不幸だと言い切れる場合のみ、赤字国債の発行もやむ無しだと言えるのだ。
その場合でも、事業者に相応の給付は供与するにせよ、不足分は貸し付けで対応すべきだ。その代わり金利をマイナスにするとか、返済開始時期を十分に後ずらしするとか、元本返済額の費用計上を認めるとか、さらに返済額の一部を税額控除するとか、様々な鎮痛措置が考えられる。肝となるのは、あくまで「借金」が主だという点だ。優しさのあまり手厚すぎる対策を取って、事業者の自主独立心まで損なってはなるまい。

(2020年5月1日日本経済新聞・夕刊 『十字路』」より転載)

調査部
研究理事
五十嵐 敬喜

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