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ポスト・グローバリズムの行方

2019/08/13

2020年は東京オリンピックの年だが、世界的にも何かと忙しくなりそうだ。英国のEU離脱という国際秩序を揺るがす大問題があり、米中経済摩擦も簡単には収まる気配がない。アメリカの大統領選挙では、トランプ優勢が伝えられている。いずれにせよ、リベラルな考え方を主張しているだけでは済まない世の中になった。

つまり、現代は、リベラルなグローバリズムに対して急ブレーキがかかっており、ポスト・グローバリズムの時代に突入したということである。実際、現代世界は、リベラル勢力、それに抵抗する反リベラル勢力、さらに、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)など世界のサイバー空間支配を狙うサイバー勢力、の3極が拮抗していると見ることができる。

これらの3大勢力は、完全にそれぞれが地理的に分断されているというわけではなく、それぞれの地域の中で混在し、対立している。例えば、世界のリベラル勢力の中心にいた英米両国において、反リベラル勢力が大きく台頭した。移民・難民受け入れが自国の文化や価値観を破壊するとしてグローバリズムに反対する右翼ポピュリストや、グローバリズムが創り出した経済格差や雇用の喪失、社会保障水準の低下など経済要因を問題視する左翼ポピュリストなど、中身は一枚岩ではないが、反リベラルという点では一致している。

もちろん、地理的な分断も存在する。英国対EU、アメリカ対中国・ロシア、EU対イスラムなどだ。これらの地理的な分断に加え、事態をさらに複雑にしているのが、GAFAなどのサイバー空間の支配を狙う巨大IT企業群の存在である。彼らは個人情報を蓄積することで、消費者を操作する力を持ち、しかも、国境をたやすく超える存在だ。20世紀型の国際秩序からすれば、全く新しい勢力である。

これらの3大勢力、リベラル、反リベラル、サイバー勢力が複雑に入り混じって、現在の国際情勢を動かしている。つまり、反リベラルやサイバー勢力が強力に自己主張を始めた結果、これまでのリベラリズムを中心とした国際秩序が大きく変質したということである。 それでは、これからの国際秩序はどうなっていくのか。それは残念ながらわからない。しかし、おそらく、ヒト、モノ、カネが国境を越えて自由に移動できるようにすべきだという素朴なグローバリズムが復活することはないだろう。自由主義自体が消えることはないが、その副作用は是正される方向に調整されることになるだろう。

例えば、GAFAなどの巨大IT企業に対しては、個人情報の使用や巨大なネットワークを活用した独占的商取引に関して、一定の規制が課せられるだろう。GAFAの分割もあり得る情勢だ。その動きは、EUにおけるGDPR(個人情報保護のための規制)やアメリカ議会での規制強化の動きに明確に見て取れる。

注目すべきは、格差是正の動きだろう。現在、世界の大富豪トップ8人の資産総額は、世界人口のうち、貧困側の半数にあたる36億人分の資産総額に相当するという。これはいくら何でも行き過ぎである。先進諸国で格差是正を訴える左翼ポピュリズム政党が勢力を伸ばしているのは、このような行き過ぎを是正する動きと見ることができる。これまで格差是正にはあまり熱心でなかった多くの政治家も、動き出さざるを得ないのではないだろうか。

ポスト・グローバリズムの時代と言っても、グローバル化自体が全面的に否定されることはあり得ない。グローバル化こそ、これまでの人類文明発展のエンジンだったし、これからもそれは変わらない。ただし、その中身は様々な勢力との利害調整を伴った、よりマイルドなものに修正されるだろう。

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