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二国間経済連携協定の「ユーザー」は産業界

2007/09/03

自由貿易協定/二国間経済連携協定(FTA/EPA)の広がり

 FTA/EPAが世界的な広がりを見せている。日本も2002年にシンガポールとの間に初めてのEPAを発効させて以来、メキシコ、マレーシア、フィリピン、タイなどとの間で交渉成立に至り、現在もオーストラリア、ベトナム、インドなどへと交渉相手国を広げている。EPAはこれまでWTOによって提供されてきた貿易自由化の枠組みを二国間で確認し自由化の一部を先取りするだけではなく、二国間の交渉によって様々な要素を取り込むことができる。注目を集めたところでは、日本フィリピンEPAで看護師や介護士、日本タイEPAでタイ調理人やスパ・セラピスト等に関する扱いが特に規定された。現在交渉中の豪州との間ではエネルギー・資源関連が焦点となっている。また、日本マレーシアEPAには政府調達の規定がなかったり、日本メキシコEPAからは金融サービスが対象外となっていたりといったバリエーションもあり、相手国によって内容が異なる。こうした規定内容の相違の背景には、両国の政治、経済等の事情や、交渉担当者による数年先を見越した着想などがある。加えて、EPAの内容に影響を与えるのが、EPAのユーザーである産業界の意向である。既存のEPAにも企業のニーズが反映されている部分があるが、今後も一層企業活動に対するEPAの効果を高めていくことが重要である。

企業にメリットのあるFTA/EPA

 将来のEPAの内容の可能性や、既に発効済みのEPAの影響などを調査研究で取り上げる場合が多い。その際、第三国同士のFTAの規定内容や交渉相手国の国内法の実態を整理して、協定内容の可能性を検討するといったデスクワークとともに、ビジネスの前線に立つ企業の方々が、如何なる困難に直面し、何を課題と考え、EPAに何を期待しているか直接お聞きすることを重視している。政府間の対外経済交渉に対するインプットは、既に総合経済団体、業界団体、個別企業など複数のルートで行われているところであるが、EPAの対象範囲が物品やサービスの貿易だけではなく、知的財産権、競争、政府調達、紛争処理、技術協力、ビジネス環境整備等、多岐に渡っていることや、しばしば技術的な点も含むことから、こうしたインプットはより一層強化されるべきである。そのためにも、交渉に反映されやすいように企業の切実な声を整理することが必要だと思われる。例えば、ある国、ある分野で「事業認可が下りない」という企業からの指摘があれば、その根拠は法律や規則にあるのか、運用の問題なのかを明らかにし、事態の改善に向けてどのような規定を日本が締結するEPAに盛り込んでいくことが有効か、既に存在する第三国同士のFTAに類似の規定は存在するか、といった観点で掘り下げていくことが有用である。

企業の期待は多様

 既に発効したEPAの効果を検証し、今後の交渉に活用するための活動も重要である。企業から、せっかく発効した協定に盛り込まれた物品貿易に関する手続きに、使い勝手の悪い部分が残っているという声を聞くこともある。また、サービス業界の一部には、やはりEPAは物品貿易のうえでのメリットはあるが、サービスについては前進しにくいのだろうか、という感触もあるようである。
 政府が大きな人的資源を投入して交渉を行うそれぞれのEPAが、交渉相手国で既に事業展開を行っている企業、あるいは将来の関係構築を検討している企業にとって、可能な限り多くの利益をもたらすものとなるよう、発効後数年の経過をみたEPAの効果の検証が急がれる。

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