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新型インフルエンザへの観光業界の対応策

2009/06/01
田中 三文

新型インフルエンザの影響で、近畿地方では修学旅行などのキャンセル・延期が相次ぎ、観光業界全体が大きな打撃を被っている。また、近畿を訪問する観光客ばかりではなく、近畿の市民自体も旅行を控える動きが出ており、近畿を主マーケットとする伊勢・鳥羽周辺などでも影響が出始めている。5月、6月の修学旅行シーズンに襲った打撃は計り知れず、既存の予約ベースのキャンセルばかりでなく、これから先の予約も停滞していることから、この状況が続くと地域経済にも大きな影響を及ぼす恐れがある。
これまでも地震などによる自然災害の風評被害を受けた観光地はあったが、病気などの影響による被害は、昭和天皇崩御による旅行自粛以外では、おそらく未経験の事態である。
観光事業者においては、新型インフルエンザが沈静化し風評が収まるのを待つしかない面もあるが、今の状況下で観光客獲得の可能性があるとすれば、足元マーケットへの一時的なシフトが残されたひとつの道ともいえよう。折しも、高速道路1,000円化、定額給付金の支給、あるいはこの秋の5連休など、観光業界には追い風の要素もあるわけである。インフルエンザを恐れ、遠出は控えるけども、多少安心感のある地元であれば旅行してもいいという観光ニーズは健在しているはずである。
特にキャンセルを余儀なくされた修学旅行の代替地として、地元の観光資源・魅力を再認識する旅行へとシフトする手は考えられる。もちろん、キャンセルではなく延期してでも実施することが受け入れ側にとっては望ましい形である。しかし、修学旅行は遠くへ行くことが目的ではないはずである。学生たちにすれば、家族旅行ではなかなか行けないところへ行きたいという希望が高いとは思うが、この事情下においては本来の修学旅行が持つ学習観光の側面に力点を置き、地元の魅力を再認識する旅行を実施してはどうだろうか。学校関係者も旅行会社もここは知恵の絞り所である。そのためには、地域も修学旅行の代替地としての協力(特別割引や特別な体験プログラム等)を惜しまず行い、地元の学生たちのためにも積極的に受け入れ先となることも求められよう。それによって地域が得る経験は、今後の修学旅行誘致にもつながる可能性もある。
観光業界は緊急事態である。昨年末からの不況により観光消費に陰りが見えている時期でもあり、インフルエンザによる2重のショックは将来への大きな不安にもつながっている。観光地においては、地域経済を揺るがすほどの緊急事態であるがこそ、観光業界、地域が今こそ一体となった対応策が必要である。修学旅行の対応を含め、地元マーケットを改めて見直し、耕すことが、まず考えられるひとつの対応策となるであろう。
1日も早いインフルエンザの収束、そして、1日も早い観光地の正常化を願っている。

研究開発部
上席主任研究員
田中 三文

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