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少子化対策の本質

2009/09/28
矢島 洋子

少子化は、先進国に特有の問題である。世界全体でみれば、もう一方に、人口増加という深刻な問題がある。では、なぜ先進国が少子化の道をたどってきたのか。やや乱暴ではあるが、一言で言えば、「ライフスタイルが多様化したから」である。多くの先進国で、70年代に合計特殊出生率(以下、「出生率」)が人口維持水準に近い2.0を下回った。60年代には、日本よりも専業主婦率の高かったアメリカや北欧諸国、オランダなどで、女性の就労率が高まり、これに伴い、出生率は低下した。つまり、「専業主婦として子育てをする」というライフスタイルに加え、「子育てをしながら働き続ける」というライフスタイル選択が台頭してきた。しかし、この新しく台頭してきたライフスタイル選択を受け入れる社会環境、つまりは「仕事と子育ての両立が可能な社会環境」が整備されていなかった。そのため、「子育てをしながら働く」というライフスタイルを選択したい女性が、「結婚あるいは出産をせずに働き続ける」か「結婚・出産をして仕事を辞めるか」に分断された。こうした選択結果は、従来よりも、女性の就労率をやや高め、出生率を減らす。実際に、これらの国では、70年代に女性の就労率が増加し、出生率は低下した。
しかし、仮に「働きながら子育てをする」という選択もできたなら、理屈から言えば、女性の就労率を高め、かつ出生率も維持できるはずである。それは、「理屈に過ぎない」とみるむきもあるだろうが、実際に、先に上げた、アメリカ、オランダ、北欧諸国では、これを実証してみせた。80年代半ば以降、女性の労働力率をさらに伸ばしながら、出生率を回復させてきている(図表)。「働きながら子育てをする」という選択が可能な両立支援環境を整備してきた結果である。90年代にはフランスが、2000年以降はイギリスも、同じ道をたどっている。つまり、逆説的に聞こえるが、ライフスタイルの多様化によって進展してきた少子化を、多様なライフスタイル選択を可能とすることで克服してきたのである。
日本でも、仕事と子育ての両立が可能な社会環境の整備が行われてきた。しかし、一方で、「女性のライフスタイルが多様化したせいで少子化になったのだから、ライフスタイルを昔のように一本化すれば問題は解決するのではないか」との見方が根強くあった。この考え方は、先進国における少子化対策の道筋としては、明かに外れている。
ライフスタイルの多様化は、女性の就労選択に限らない。核家族化の進展、離婚の増加、若者の雇用の非正規化、晩婚・晩産化。これらに伴って生じる、子どもを生み育てる上での困難を排し、どのような状況に置かれていても、子どもを産み育てたいという意思を持った人に社会がチャンスを与える。子どもを持つという選択のハードルを下げ、選択が回避されないようにすることが重要である。
少子化対策が注目され、大きな予算が投入されることは望ましい。ただし、その政策は、「多様なライフスタイル選択」に寄与するのか。そこに先進国における少子化対策の本質があることを忘れてはならない。

合計特殊出生率

(注)1970年,80年,85年,90年,2000年の5時点。
(出所)「少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較報告書」
(平成17年9月 男女共同参画会議少子化と男女共同参画に関する専門調査会)

共生社会部
執行役員
矢島 洋子

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