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高速料金改定で観光マーケティングはどう変わる

2010/04/26
田中 三文

政府が進めようとする新成長戦略の柱のひとつに「観光・地域活性化」が掲げられ、いよいよ国をあげての本格的な観光振興が展開されようとしている。地方自治体においても、地域活性化の切り札として観光への関心を高め、各地で観光計画やビジョンづくり、そして、それに伴う具体的なアクションプランが実行され、年々、各地での観光魅力が高まっていることは実感される。
ところが、現実的には、長引く消費不況により観光地は決して順調ではない。特に、宿泊施設を多く抱える観光地においては、宿泊者の減少に歯止めがなかなかかからず、厳しい状況が続いている。消費不況のなか、いわゆる”安・近・短”型の手軽な観光地が人気を呼び、旅行費用のかさむ宿泊旅行の需要は停滞している。
そんな状況のなか、観光業界が大きな期待を寄せていたのが、高速道路無料化の動きであった。高速道路の無料化によってマーケットは確実に拡がり、旅行行動を喚起する起爆剤になると期待されていた。ところが、実際に発表された施策は、普通車上限2千円を基本とする新料金体系である。概ね高速利用1時間以内の近隣マーケットにおいては、現行の割引制度と比較すると値上げ、そして、上限2千円つまり往復4千円にガソリン代を加えると決して”安い”という感覚ではなくなってしまう料金設定に対し、多くの観光地は対応にとまどいを見せている。
しかも、一旦、休日千円、通勤割引、深夜割引等の恩恵を得た消費者においては、全般的には値上げという印象が強く、その反動による観光意欲減退の恐れもある。特に、観光地にとって最も重要である足下マーケットの観光交流を活発にしてくれた各種割引の廃止の影響は大きく、各地域におけるマーケット戦略の見直しが必要となっている。もちろん、宿泊が主体の地域なのか、日帰り観光が主体の地域なのかによっても戦略は異なる。
では、新しい制度下において、どういったマーケット戦略を立てるべきだろうか。特に影響を受ける宿泊主体の地域においては、当然のことながら、片道2千円料金によって”お得感”を得られるマーケットに対してのアプローチが求められる。ただ、単純に現状の基本料金2千円以上のエリアがそのまま対象となるのではなく、そのマーケットにない魅力を受入側の地域が持っているかどうかが大事な要素となる。そして、渋滞が少ないなど移動の快適性も求められる。上限2千円であればどこまでも遠くへ行くというわけではない。概ね1泊旅行に際しての移動時間は2時間前後までであることからも、その周辺の人口集積地を狙うべきであろう。そして、今回の狙いどころは、休日だけではなく、平日も上限2千円になる点である。平日に時間があり、お金にも多少の余裕がある高齢者層はまさにターゲットとなる。概括すれば以上のように、新しい高速道路料金によって新たに狙うべきマーケットは自ずと絞られてくる。あとは、それらのマーケットに対していかに効果的なPR展開をしていくのか。上限2千円によってやみくもに対象マーケットを拡げるのは得策ではない。来てもらえる可能性の高いエリアに対して的確なエリアマーケティングを実行することが望まれる。

研究開発部
上席主任研究員
田中 三文

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