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短時間勤務と女性のキャリア

2010/10/25
矢島 洋子

2010年6月30日に改正育児・介護休業法が施行され、育児期の短時間勤務制度の導入が企業に義務づけられた。既に制度を導入している企業からは、育児休業と短時間勤務制度がセットで活用されることで、「育児期の就業継続が可能となった」という前向きな評価と共に、制度が一般化し、利用者が増えるにしたがって、「働き方やキャリアに対する展望がないまま権利として制度を利用する人が増えた」というマイナスの影響を指摘する声も聞かれる。

制度導入当初は、「短時間勤務がなくても就業継続していたであろう層」を中心に、制度が利用されるケースが少なくない。短時間勤務であっても、フルタイム勤務時と同程度の仕事をしていたり、職場の状況をみて残業をすることも可能である人や、いわゆる一般職として、時間で区切りやすい仕事を担っていた人などが多く、そのため、職場の同僚が短時間勤務者の仕事を肩代わりする程度も少なく、「効率よく働く人」として、むしろ職場から歓迎されている、という話が多く聞かれた。しかし、取得者が増えてきて、「短時間勤務がなければ就業継続していなかったであろう層」にも利用が拡大してきたことによって、短時間勤務制度の運用の難しさが表面化してきている。

短時間勤務制度がなければ、就業継続していなかったであろう層の特徴は、いくつかある。まず、本人の意識の問題として、仕事と生活のバランスについて、常に仕事第一とは考えないタイプである。しかし、仕事に対する意欲が低いかというと必ずしもそうではなく、子どもを持つ前に仕事に打ち込んでいたからこそ、子育てをしながら仕事をすることに不安を抱き、これまでのように仕事ができない分を、勤務時間の短縮分の給与の控除という形で処遇を変えてもらうことで自分や周囲を納得させたいと考えている。親等の親族のサポートが得られない、場合によっては夫の協力も得られないため、保育園のお迎え時間に何が何でも間に合うように帰らねばならない。子どもの生活時間や生活の質に対して、強い意識を持っていて、子どもの食事時間や睡眠時間を優先して、生活を組み立てたいと考えている。

短時間勤務の「両立支援策」としての意義は、本来こうした「短時間勤務制度がなければ就業継続していなかったであろう層」が制度を利用することで、離職率が減少する点にある。しかし、これまで「仕事最優先」、「急な残業要請にも対応可」という人を中心に構成されていた職場では、こうした層にうまく仕事を切り出すことや、数年にわたって短時間で勤務する人のキャリア展望を描くことができない。

仕事の切り出しについては、勤務形態が変わり給与も減額されても、フルタイムの時と同じ仕事が課せられ、本人の努力のみで調整せねばならないということであれば、本人が無理をして実質短時間勤務にならず、両立が困難となってしまう人や、できない分の仕事は投げ出して帰るしかないと割り切り、周囲と軋轢を生む人が出てくる可能性がある。逆に、従来その人が担っていた役割はまかせられないとして、これまで課せられていた期待役割に対して、低い役割を与えられることによって、モチベーションダウンする場合もある。これまでのキャリアに応じた期待役割を踏まえ、短時間で対応が困難な点のみを調整することが必要である。同時に、短時間勤務者が担えない業務について、単純に、同じ職場の特定の人の仕事に上乗せするのではなく、職場全体で、仕事の再配分をし、その際、仕事の効率化をはかって、職場全体の負担を軽減することが必要である。

キャリアについても、従来の男性社員がたどっていたキャリアコース・スピードに乗るという選択肢しかなければ、そのレールに乗ることは難しいと考え、キャリアの展望を描けずに、モチベーションダウンしてしまう人が出てくる。従来とは違うコース、あるいは、ゆっくりとしたスピードでも、向上させていけるキャリアの展望が見えることが必要である。

女性活用やワーク・ライフ・バランスを目標に掲げ、短時間勤務制度を導入しても、制度利用を踏まえたキャリアデザインについて、雇用主と本人双方に展望が持てなければ、本人や周囲のモチベーションダウンや職場内での軋轢が生じる。雇用主の立場からは、今一度、短時間勤務制度を導入する目的を確認していただき、制度が、本来の目標達成に結びつくよう、キャリア支援や仕事の配分等、運用面での配慮を期待したい。

共生社会部
執行役員
矢島 洋子

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