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地方自治法改正で幅広い人材が参加する地方議会へ

2010/12/21
大塚 敬

1.地方自治法抜本改正の検討の経緯

 現在、総務省が設置した「地方行財政検討会議」において、地方自治法の抜本改正に向けた検討が進められている。これまでに、平成22年6月に「地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方」が取りまとめられ、その方向性にそって議論が継続されており、平成23年3月の地方自治法改正法案提出を目標として検討が進められている。
 既に、第二次の取りまとめとなる「地方自治法抜本改正についての考え方(仮称)」の案が審議資料として公開されている。細かな部分に関しては、最終的な改正法案の確定までに軌道修正がなされる可能性があるが、基本的方向性はこの案から大きく変わることはないと考えられる。

2.今回の改正の全体像

 「地方自治法抜本改正についての考え方(仮称)」に整理されている今回の抜本改正の主要な論点は、(1)地方公共団体の基本構造のあり方、(2)長と議会の関係のあり方、(3)住民自治制度の拡充、(4)国と地方の係争処理のあり方、(5)基礎自治体の区分・大都市制度のあり方、(6)広域連携のあり方、(7)監査制度・財務会計制度のあり方の7点である。
 いずれも、今後の地方自治体のあり方を考える上で極めて重要な論点であるが、ここでは「住民自治制度の拡充」で触れられている「議会のあり方」の見直しに絞って、その概要と具体化に向けて更なる検討が求められる課題について述べたい。

3.議会の見直しの方向性とその課題

見直しの概要

 この論点において制度の見直しが必要とされている問題意識は、地方議会が地域住民の意志を適切に代表するためには、多様な属性の住民が議員となるような環境を整備する必要があるという点である。このため、具体的な見直しの方向性として議論されているのは、第一に会期など、多様な属性の住民が参加しやすい議会の開催方法の検討が必要であること、第二に労働法制や公務員法制において議員として活動する際の休暇、休職・復職などに関する制度の整備について検討が必要であること、である。

見直しの二つの方向性の相違点とそれぞれの課題

 確かに、これらの見直しが徹底して行われれば、これまでほとんどの地域住民にとって縁のない場だった地方議会が、誰でも参加できる身近な議論と意志決定の場として機能する可能性がある。
 しかし、この二つの見直しの方向性は、本質的にはまったく異なった目的を持つ取り組みである。
 第一の点に挙げられている地方議会の開催方法の見直しは、例えば、休日か平日なら夜間に議会を開催すれば、普通の会社員が仕事を休・退職することなく地方議会議員として活動することができるのではないか、という問題意識に立っている。しかし、これは、会議に出席することはかろうじて可能である、という条件が満たされるに過ぎない。地方議会議員の期待役割が、裁判員と同じように、限られた時間と労力の中で、平均的な国民(住民)の目線にもとづく判断を下すというところにあるのであれば、これで問題はない。しかし、地方議員の期待役割が、相当程度の時間と労力を費やすことが必要な専門性の高い調査・検討にもとづく政策形成や意思決定などであるなら、かろうじて会議には出席できる、というだけでははなはだ不十分であり、普通の会社員や学生が掛け持ちで地方議員となることは到底困難といわざるを得ない。
 一方、第二の点に挙げられている、労働法制等で議会参加のための休職・復職に係る制度を整備するという取り組みの方向性は、普通の会社員であっても、職を失うリスクを負うことなく一定期間地方議会での活動に専念できる環境を保障しようとするものであり、地方議員の期待役割が高度に専門的であっても、こうした環境が整備されれば、より幅広い住民の議会参加が期待できる。ただし、労働法制等の整備がなされても、企業等の現場で、制度の利用に理解と協力が得られ、復職時の不利がないなど、その制度の趣旨にそって適切に運用されることが必要である。

4.地域の実情に応じた運用が可能な制度とすることが最も重要

 今回の地方自治法改正による議会改革が、兼職も可能な程度の負担で幅広い住民の参加を促すものであるのか、これまでどおり相当程度の時間と労力を費やすことが必要な専門性が求められる役割のまま、参画に係るリスクを低減することでより多様な人材の参画を促すものであるのか、あるいはその両方であるのか、現時点では明確ではない。しかし、いずれの方向性を目指すにせよ、その選択は各地域の自治体と住民に委ねられるべきであり、地域の実情に応じた選択が可能な自由度を設けることが最も重要であろう。

公共経営・地域政策部
上席主任研究員
大塚 敬

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