1. ホーム
  2. レポート
  3. レポート・コラム
  4. サーチ・ナウ
  5. 工場立地動向調査、海外事業活動基本調査を読む

工場立地動向調査、海外事業活動基本調査を読む

2011/05/11
永柳 宏

 2011年3月末に工場立地動向調査が発表され、2010年の国内工場立地件数(注1)が、昭和42年の統計開始以来、「過去最低」となった(図-1)。平成不況を経た景気回復期の2007年には1,791件の全国立地件数であったものが、2008年以降、減少をたどり直近の2010年では786件(前年比-9.3%)となったのである。リーマンショック前後の3年間に約4割の規模にまで減少したことになる。2000年以降、我が国では「製造業の国内回帰」とも言われた工場立地の回復傾向がみられ、2009年には工場立地を支援する企業立地促進法が施行されただけに、ここ3年間の工場立地の減少は、地域振興の視点からは残念と言わざるを得ない。しかし、こうした工場立地の動きは、今後、しばらく継続するものと考えられる。
 2000年以降の立地件数増加の主な業種は、輸送機械、金属製品、プラスチック製品に代表される輸出志向の加工組立型産業であり、当時の円安情勢と北米景気によってもたらされたものであった。経済産業省から発表されている海外事業活動基本調査(注2)をみると、こうした要因をはっきりみることができる。調査対象の製造業における海外での売上規模は、2007年は111兆円に到達し、2000年の56兆円から倍増した(図-2)。そのうち、輸送機械が過半を占めている。北米エリアでの輸送機械産業の経常利益の推移をみると、2000年度では2,071億円であったが、2007年度では7,569億円に達している。しかし翌2008年度の当該産業の経常利益はマイナス(2009年度には1,655億円に回復)になり、我が国の工場立地を牽引した加工組立型産業の工場新設に影響を与えた。
 つまり、加工組立型業種を中心とする我が国の工場立地の多くは、北米で稼いだ資金を、国内の設備投資に充当してきたものである。北米景気と連動した国内工場立地は、リーマンショック以降、大きく落ち込み、加えて、既存工場は大きな生産余剰を持つ形になったのである。
 中国等のアジアでの市場拡大に期待したいところであるが、なかなか国内の工場立地につながっていない。そもそもアジア市場は、価格志向であるため、調達・組立・輸送のコスト面から、現地生産が求められるといったことが背景にある。また、海外事業活動基本調査にみる2009年度の日系企業の海外現地法人の売上高は、中国、ASEAN4、NIEs3ともに減少しており、現地の販売利益が、日本国内の設備投資を促す存在にはなっていない。高品質・高機能な日本製品がアジア市場で一定の売上げを確保し、我が国の生産活動に貢献するには、中期的な時間経過を要するであろう。
 2つの統計から、2007年までの好景気から一転、国内の工場立地が低迷し、海外においても苦戦をしている状況をみることができる。しかも、海外への設備投資は、08、09年度ともに縮小傾向にあり、内需減少をカバーするための企業の海外投資姿勢は必ずしも十分とは言えない。しかし本来、国内の工場立地と海外の設備投資が、同期して増減する形は不自然であったとみることもできる。企業活動からみれば、輸出や国内市場の情勢が難しいときにこそ、成長市場での海外生産を伸ばす必要があろう。
 北米市場で得た余力を国内に投資するといった近年の投資パターンが崩れた現在、今後の設備投資は、内需・外需対応ともに、業界・企業の様々なシナリオに基づく個別判断で実施されることが予想される。円高、東日本大震災、そして電力不足が、2011年度以降の内外の設備投資を不透明なものにしているが、今後の内外企業立地・設備投資を読むためには、個々の企業体力と業界情勢を読み解く力が益々必要になっている。国・自治体の企業立地担当者は、各企業・業界のニーズを踏まえた、きめ細かい工場立地支援・海外進出支援策の検討が求められる。

図1 全国の工場立地件数と立地面積の推移

全国の工場立地件数と立地面積の推移
注:研究所を除く。
(資料)工場立地動向調査

図2 現地法人売上高と海外設備投資比率の推移

現地法人売上高と海外設備投資比率の推移
海外設備投資比率=現地法人設備投資額/(現地法人設備投資額+国内法人設備投資額)×100.0
(資料)海外事業活動基本調査

(注1)工場立地動向調査:経済産業省では、毎年、1,000m2以上の用地取得を行った事業所を対象として、工場立地件数・面積等を補足している(最新速報を2011.3.29に公表)。
(注2)海外事業活動基本調査:経済産業省では、毎年、海外に現地法人を有する企業を対象に、アンケート調査により海外事業活動の実態を補足している(最新の第40回調査を2011.4.11に公表)。

研究開発部
地区本部副本部長
永柳 宏

関連レポート

レポート