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スマートコミュニティを巡る動向

2011/09/16
宗像 慎太郎

電力消費機器と発電システムを高度な情報通信技術でネットワーク化する「スマートコミュニティ」を巡る各国及び企業の動きが活発である。本稿はその主要動向と展望を示す。

日本のスマートコミュニティ動向

 次世代エネルギーインフラを備えたスマートコミュニティの構築は、結果としてもたらされる省エネ効果はもちろん、新市場と新産業の創出効果の点から期待を集めている。様々な支援政策の下、多くの企業が新市場への参入を急いでいる。
 スマートコミュニティは、分散する各種発電システムと、家庭製品から工場設備までの各種電力消費機器を、高度な情報通信システムで接続した次世代都市インフラ構想・技術を表す言葉である。ネットワーク化と大規模かつ詳細な制御が、都市レベルでの従来以上の省エネと、再生可能エネルギーの安定かつ効率的運用を可能にすると期待されている。
 期待は省エネだけではない。スマート家電や電気自動車といった新機器需要、次世代情報通信システムに係る大規模設備投資需要が、新市場とそれを担う新産業を創出すると期待されている。海外にも大市場が形成されると見込まれることから、日本政府は新成長戦略の柱の一つとしてこれに注目し、政府内の横断組織及び官民連絡組織(スマートコミュニティアライアンス(以下JSCA))の設置、実証事業(図 1)、海外インフラ輸出支援、技術標準戦略の海外展開等、矢継ぎ早に支援政策を打ち出している。2011年6月現在、JSCAには625社が登録するなど、多くの企業がこの新市場に関心を寄せている。
 家電の使用情報等のプライバシーの問題、電力業界からの反発等、システム構想としてあまりに包括的であることから関係者の利害は完全には一致していない。しかし全体としては、上記のように官民を挙げての取り組みが進んでいると言えよう。

国内の主要実証事業図 1 国内の主要実証事業

各国の取り組み状況

 海外のスマートコミュニティへの関心は、それぞれの電力事情に応じて差が見られる。
 図 2は、スマートコミュニティの類型と各国の事情を整理したものである。米国ではそもそも老朽化した送配電系統が更新時期を迎えている。また日本と異なり発電事業と送電事業が分業され、電力が市場取引されていることから、需給の正確な把握・予測の下で取引市場を十分活用できれば、電力サービスの大幅な低コスト化が期待できる。太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーが大規模に系統に接続された欧州では、電力網の不安定性が課題となっており(注1)、この解決手段としてスマートコミュニティの導入が急がれている。インドや中国等の途上国の都市部では、既存の電力インフラの信頼性が低いこと、盗電等の問題を抱えていていることから、最新のエネルギーシステムであるスマートコミュニティの構築に関心を寄せている。そして郊外や離島等では、地域のエネルギーである自然エネルギーを中心に、エネルギーを効率的かつ独立して運用する手段として、スマートコミュニティの一要素とも言える「マイクログリッド」に関心を示している。
 このように技術の方向性に地域差があり、かつこの巨大システムを単独で供給することが不可能であることから、企業には自社の強みを十分に考慮した提携戦略が重要となる。

各国の電力システムの課題と類型図 2 各国の電力システムの課題と類型

脱「オールジャパン戦略」こそが最重要戦略

 低迷する国内製造業を産業単位で底上げすべく、経産省を中心とする日本政府は、国内企業の技術を「パッケージ化」し、海外市場に挑む「オールジャパン戦略」を好む傾向にある(注2)。しかし企業にとって重要なのは、必ずしも日本企業と提携することではない。図 3のような様々な主要プレイヤーと、国内外を問わず提携を検討し有利に事業展開することが、最も重要な目標である。東芝は、海外スマートメーター大手 Landys+Gyrの買収、Hewlett-Packardとの提携の他、イタリアや米国での事業化の取り組みを公表している。熾烈な競争に勝利するためには、従来の「電力村」の関係にも、オールジャパンにこだわりがちな政府方針にもとらわれずに、必要な相手と必要なときに組むという経営判断が、最も重要な鍵を握ると言えよう。

スマートコミュニティ関連主要プレイヤー図 3 スマートコミュニティ関連主要プレイヤー(上段:国内、下段:海外)

【参考文献】
 スマートコミュニティフォーラム2010:スマートコミュニティフォーラム事務局.スマートコミュニティフォーラムにおける論点と提案.2010年6月15日.
 国家戦略室2010:国家戦略室.パッケージ型インフラ海外展開推進実務担当者会議:中間とりまとめ.2010年6月18日.
 電力系統研究会2007:電力系統の構成及び運用に関する研究会.電力系統の構成及び運用について.2007年4月.

(注1)2006年に欧州全域で発生した大停電では、風力発電が(1)非意図的に一斉解列し周波数低下を招き、(2)さらにその後自動再連係したことで出力調整に困難をきたした、と報告されている(電力系統研究会2007)。
(注2)例えば国家戦略室(2010)にも「オールジャパン」という表現が見られる。

持続可能社会部
主任研究員
宗像 慎太郎

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