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保護を要する児童の自立に最も必要なこと

2011/12/20
善積 康子

  幼保小の円滑な連携を進めるために子ども・家庭・保母・教諭に伝える事をまとめる手引き作成、障がい児の療育支援のための拠点のあり方検討、児童養護施設など保護を必要とする子どものための施設を退所した当事者のその後調査、非行行為をした児童の育て直しを行う児童自立支援施設調査など、今年度は児童の育ちに関わる調査が集中している。
 (保護を要する児童への支援施設例と対象児童)

対象児童
里親制度 保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童
乳児院 保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童
児童養護施設 保護者のない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童(安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む。)
情緒障害児 軽度の情緒障がいを有する児童
短期治療施設 不良行為をなし、又はなす恐れのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童
児童自立支援施設 義務教育を終了した児童であって、児童養護施設等を退所した児童等

 これらの調査のなかで共通するキーワードがある。それは”発達障がい””虐待””自立”であり、そして”親育て”という概念である。特に、非行行為等をした児童を対象とする児童自立支援施設はそのキーワードが顕著に関わる事例であり、この施設での傾向を紹介する。児童自立支援施設は、上表にもあるとおり、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設である(児童福祉法第44条)。職員が常に子どもに寄り添い信頼関係を築きながら、規則正しい生活を行わせることで、非行の背景にある環境要因に働きかけ、児童が自らの問題に向き合うことを支援する。
 一般的には小学校高学年から中学生が対象となるのだが、近年、少年非行の低年齢化が進んでおり、小学校低学年の入所もみられる。入所理由は、窃盗、家出・浮浪、暴力行為が多いのだが、性的逸脱行動や放火、薬物嗜好等、非行内容が多岐にわたるようになってきた。最近では、メールによるいじめ行為や出会い系サイトによる性非行等、ITを活用した非行問題も増えている。その子どもの多くが幼児期や小学校低学年期に親から虐待を受けた経験を有する被虐待児なのである。また軽度の発達障がいがみられる子どもが増えてきていると施設側は感じている。だからこそ、子どもを理解し、子どもの心に寄り添い、家庭の温かさを感じてもらって、大人への信頼を回復させたいということを軸に、財政的に厳しいなかでも、夫婦制という疑似親が一定数の子どもの集団と共に暮らすという手法を守ろうとしている施設が少なくない。
 しかし、いつまでも施設で暮らすことはできず、やはり現実の親の元での家庭に戻ることになる。実際、多くの子どもたちは家に戻ることを望むそうだ。施設を退所した後、子どもたちが自分の力で社会生活ができるようになることが求められる訳だが、家庭がその基盤となりうるかどうかが大きく影響してくる。残念ながら、退所後の子どもたちが不良行為を全くしなくなるかというとそうではない。参考としてだが、法務省発行の「平成23年版犯罪白書」によると、『少年院収容者の出院後の動向をたどった追跡調査を初めて実施したところ、元収容者のうち、約4割が25歳までに再犯に及んでいるという状況がみられた。また少年鑑別所の入所者等を対象とする非行や犯罪に対する意識調査では、「悪いことを思いとどまらせる心のブレーキは何か」との質問に、「家族」と答えたのが68%であった』(内容を要約して記載)とのこと。法務省管轄の少年院は、児童自立支援施設と目的や役割、対象者がやや異なる。これを踏まえた上であるが、児童自立支援施設へインタビューをすると、家庭がしっかり受け止めるようになると自立につながっていく子どもが多い、という意見を聞く。だから、子どもの入所が決まると保護者との関係をつくろうと施設側も努力をする。ただ、子どもの措置権を施設がもっているわけではなく、家庭への指導は児童相談所や学校に期待するところが大きい。保護者が面会にすら来ない家庭もあるなか、施設だけの努力ではとうてい達せられるものではない。子どもたちは、児童自立支援施設で過ごす間、親が運動会などに来てくれると、本当に張り切って嬉しそうな顔を見せるという。また発達障がいの可能性のある子どもが増えてきていても、職員には十分に対応できるノウハウはなく、児童精神科などとの連携が必要だが、この分野の医師がこれまた少ない。
 児童の自立などを本気で考えるなら、また社会不安を減少させていくなら、子ども一人ひとりに適した支援を、ソーシャルワークや臨床心理等の力のある人材を必要な人数配した専門機関がそれぞれの役割を明確にしてチームを作り、医療も含めて対応できる体制をつくること、地域社会では地域自治組織や民生委員による見守り・支援活動を警察や学校が支援をして体制を作ること、これらがもっとも重要であろう。そして、家庭では、子どもと向き合いしっかり抱きしめること、これが本当に大事なのかもしれない。ソニーの元名誉会長井深大氏は、「働くお母さんたちは、8秒間子どもを抱きしめてあげなさい」と言われた。いつも子どもの事を考えている、それを態度で示すこと。この気持ちがあれば、どれほどの子どもの心が救われるか。調査をするたびにそう痛切に感じる。

研究開発第1部
主席研究員
善積 康子

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