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対談:東京オリンピック(6)大規模イベントでのサステナビリティ推進

標準規格の策定とサプライチェーンマネジメント

2015/02/13
本橋 直樹 日本2020戦略室

当社内横断的組織「日本2020戦略室」のご紹介

2020年の夏季オリンピック・パラリンピック競技大会の東京開催が決まり、大会企画運営、施設整備、会場周辺のまちづくり、海外からの観光客誘致、スポーツ振興、各種キャンプ地誘致等、さまざまな取り組みが動き始めています。当社は、多様で幅広い専門性を持つ研究員や、外部専門家とのネットワークを活用して、関係者の皆様の取り組みをお手伝いいたしております。
>>「日本2020戦略室」の詳細はこちら

■はじめに

このシリーズでは、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて、持続可能性(サステナビリティ)課題に取り組む方々にお話を伺います。第6回は、イベントでのサステナビリティの促進に多様な側面から関与されている、フィオーナ ペルハム氏です。

ISO20121-イベントサステナビリティの標準規格策定への関与

本   橋: ペルハム氏は、イベントにおけるサステナビリティの促進に取り組んでおられると伺っております。まず、現在どんなことをされているのか、簡単に教えて頂けますでしょうか。
ペルハム氏: 現在は2つの団体でイベントサステナビリティに関する活動を行っています。1つ目は、Sustainable Event というコンサルタント会社です。イベント産業界のサステナビリティ性向上の為のコンサルティング、関係者への研修を実施する他、イベントサステナビリティに関する標準規格であるISO 20121の策定に関与し、その普及等に努めています。現在、私自身がISO20121の事務局長を務めています。
2つ目は、Positive ImpactというNPOです。こちらでは、イベント産業関係者のサステナビリティに関する理解・知識の向上を図るため、ワークショップの開催やガイダンスの作成、e-learningコースの提供等を行っています。
本   橋: ペルハム氏がこのような活動を始められるきっかけとなったのは何ですか。
ペルハム氏: 私は元々、多くの人が関与するイベントが大好きでした。一方で、ガールスカウトの経験もあったからでしょうか、環境問題、とりわけリサイクルにも興味があり、これらが合わさって、イベントとゴミの関係、さらには、イベントと環境とコミュニティの関わりについて色々と考えるようになりました。あとは、ビジネスそのものにも強い関心があったのも事実です。これらが全て合わさって、現在の活動があると考えています。

 

サプライチェーン側から一大イベントのサステナビリティ向上を図る

本   橋: ロンドン大会では、どんな活動をされたのですか。
ペルハム氏: 私個人は、ISO20121の事務局長を務めていました。その他にLOCOG(注1)とは違う立場から、主にサプライチェーンのサステナビリティ向上の為のワークショップ開催や研修の提供等を行いました。大会におけるサステナビリティに関する取組では、LOCOGは大会の運営そのものに注力し、私達は大会を支えるサプライチェーンの部分を担当するという役割分担がありました。これら活動を通じ、私は認証機関やイベント産業の関係者等30を超える国の人々と共に働きました。
一方で、Positive Impactは、様々なステークホルダー、サステナビリティの専門家、廃棄物の専門家、イベント産業の関係者等を繋ぐ重要な役割を果たしました。その結果、2008年のロンドン大会開催が決まった当時はまだ、サステナビリティについて世間の関心はそれほど高くは有りませんでしたが、今では多くのスポンサーを得られるようになりました。
本   橋: サステナビリティへの取組を行う上で、オリンピック・パラリンピックは他のイベントとどんなところが異なっているでしょうか。
ペルハム氏: それほど大きな違いはありません。ゴミや騒音等、どんなイベントにも課題は有ります。ただ、やはりオリンピック・パラリンピックは規模が大きい分、何かを変えるポテンシャル、実行可能性は確実に違います。このような一大チャンスに何もしないことが最も危険です。
本   橋: 取組を進めていく上で大切なことは何でしょうか。
ペルハム氏: まずは学ぶことから始め、何を目標とするかを定めることが重要です。単に前例をコピーするだけでは何にも起きません。その上で、公開ワークショップ等の開催を通じて関係者を巻き込みながら、社会・経済・環境の全ての側面から計画を作成する必要があります。短いビデオクリップをいくつか作って、サステナビリティに対する人々の意識を高める活動も重要です。しかし、何よりも大事なのは、「○○をしなさい(Must Do)」というメッセージを出すことでは無く、「これをするんだ!(Let’s do it!)」というリーダーシップを示し、人々をその気にさせ、世界に対してスタンスをアピールすることです。

 

成功のカギは、早い段階からの取り組みと強いリーダーシップ

本   橋: 2020年に向け、東京はどんな取組を行うべきでしょうか。
ペルハム氏: ロンドンでは、サステナビリティは当初より重要テーマの一つに位置付けられてはいましたが、その実現の為の枠組みはなかなか出来ませんでした。しかし、東京はロンドンで作られたISO20121などの枠組み・ガイドラインを最初から使うことが出来ます。実際、これらを用いて、2018年のゴールドコースト・コモンウェルスゲーム(注2)の準備はもう始まっています。(サステナビリティに関して)一度進んだ取組が後戻りすることはありません。幸い、東京大会まではまだ時間があります。専門家等の意見も参考にしながら、大会を通じてどんなことを成し遂げたいかを考え、今すぐに具体的な準備を始めるべきです。
本   橋: 最後に東京へのメッセージをお願いします。
ペルハム氏: 取組みを引っ張る人がリーダーシップを示し、人々をその気にさせる(Inspire)ことと、直ぐに準備を始めることだと思います。良い大会になることを期待しています。

(インタビュー日:2014年9月24日)

フィオーナ ペルハム氏
2005年にイベント業界のサステナビリティ啓蒙の為のNPO Positive Impactを立ち上げ。また、企業のサステナビリティ戦略等にかんするコンサルティングサービスを提供するSustainable Events Ltdの代表者を務める一方、2012年のロンドン大会をきっかけとして、イベントにおけるサステナビリティの標準規格であるISO20121の事務局長も務める。
サステナビリティ普及に関するこれら活動に対し、リーズ・メトロポリタン大学より、名誉博士号を授与された。
2015年7月には、会合やイベントの運営等に携わる20,000人を超える国際会員からなる団体、Meeting Professionals International の議長に就任予定。
サステナビリティへの情熱とイベント運営に関する知見、サステナビリティの戦略的実践の融合により、ユニークなアプローチを展開。

 

(注1)The London Organising Committee of the Olympic and Paralympic Gamesの略。大会組織委員会。
(注2)英連邦に属する国や地域が参加して4年ごとに開催される総合スポーツ競技大会。
研究開発部
主任研究員
本橋 直樹

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