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防災・減災対策を考えなおすシリーズ Ⅴ

防災力向上に向けたリスクコミュニケーション

2020/08/19
政策研究事業本部 研究開発部 主任研究員 小森 清志

1.はじめに

筆者は、2012年11月から2015年10月まで環境省に出向し、国が福島県内で実施する除染やその放射線影響などの広報を担当した。本稿は、当時の経験を振り返りつつ、近年頻発する大規模災害を踏まえ、防災力向上に向けたリスクコミュニケーションについて提示する。
なお、リスクコミュニケーションについては国や各種論文等で種々の定義や概念が示されているが、本項においては、化学物資や原子力などの健康リスクだけでなく、災害などが発生した際の生活や行政運営などへのリスクについて、正確な情報を、住民、事業者、専門家、行政、その他関係団体などのステークホルダー間で共有し、合意形成を図り、相互理解を醸成するプロセスや取組とする。また、主には、行政機関に向けた記載内容であることをご理解いただきたい。

2.災害リスクを住民と共有する重要性

行政と住民との災害に関するリスクコミュニケーションにおいて最初に実施すべきことは、災害リスクの共有である。災害に対して関心が高い住民もいれば、関心が低い住民もいる。また、関心度が高くても、例えば、行政が作成し配布した災害ハザードマップから、災害リスクを過大もしくは過小に評価する住民などがおり、様々な立場や条件で生活するなかで受け取り方が異なることに配慮する必要がある。あわせて、住民の生活とも関係が深い、事業者、行政と連携した取組が期待できるNPOなどの関係団体への働き掛けも必要である。
災害に関するリスクコミュニケーションを主導することが多い行政としては、住民に災害リスクを提示して、正しく理解していただくことが重要になる。また、住民の実情を加味した対応も必要となり、行政が重要な役割を担うことは言うまでもない。

3.リスクコミュニケーションのポイント

リスクコミュニケーションのポイントは表に示す5つである。

表 リスクコミュニケーションのポイント

① 公開情報の活用・理解・共有
② それぞれの立場を尊重した対話
③ 有識者や専門家との連携
④ 適時・適切な情報提供
⑤ 端的な表現と説明

例えば、「①公開情報の活用・理解・共有」について、行政としては情報を公開しているが、ホームページへの掲載に留まり、住民との相互理解や共有を図るプロセスが欠けることがある。日々、多くの情報を提供している行政においては、全ての内容について共有するプロセスを設けることは難しいかもしれないが、問い合わせに対して担当者のみが応対する体制ではなく、課員や室員などのチームで対応できる体制を整えておくことで、「④適時・適切な情報提供」にもつながっていくと考えらえる。
また、「②それぞれの立場の尊重した対話」について、行政、特に市町村職員は、住民の置かれている立場や実情を把握されていると理解しているが、ありがちなのが行政側からの説明が住民に届いていないという場面である。これは、例えば、住民の実情に配慮し丁寧に説明を心掛けることに注力しすぎて、「背景や課題」から説明を始め、住民が最も聞きたい「結果」までに時間を要し、「⑤端的な表現と説明」になっていないことが原因である。このような場合には、住民の立場に寄り過ぎない「③有識者や専門家との連携」して伝えていくことで、行政と住民の相互理解も図られるものと考えられる。
なお、記載した内容は、防災に限らず至極当たり前のことではある。他方で、筆者の経験上、リスクコミュニケーションを図りたい主体において、これらのいずれかが欠けると、適切なリスクコミュニケーションが図られないことを体感している。

4.今後の備えとして行政に求められるリスクコミュニケーション

近年の大規模災害の頻発とともに、コロナウイルス感染症の拡大など、リスクコミュニケーションにおける行政が担う役割は重要かつ多様なものになっている。このような状況下では、住民、事業者、専門家、その他関係団体との連携と信頼関係の構築が最も重要となる。信頼関係の構築は一朝一夕では成り立たず、日常的な対話と恒常的な取組が必要となる。こと「災害」に関しては、平時からの取組が重要であり、例えば、先に記載した災害リスクの共有について、住民の立場に寄り添った対応とともに、座学だけではなくセミナーやシンポジウム、地域の防災訓練等のイベントによる周知や情報提供も必要である。
今、行政が必要とするリスクコミュニケーションついて、一緒に考え、提言し、防災力向上に寄与していきたい。

研究開発部
主任研究員
小森 清志

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