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企業活動とお金の流れ

2008/01/01
小林 真一郎

 企業は従来、恒常的な資金不足の状態にあったが、最近では資金余剰の状態にある。これは、好調な企業利益を背景に内部資金調達額が潤沢であるうえ、バブル崩壊後、短期資金を中心に資金需要が弱まったことが原因である。資金需要は経済規模や企業規模と比較してもバブル崩壊後に急速に弱まっており、景気拡大が続き、企業のバランスシート調整が終了したにもかかわらず、資金余剰の状態が続いている。このため、企業の内部留保が膨らんで自己資本比率の上昇が続き、ROEが伸び悩む原因となっている。
 もっとも、最近になって企業の資金余剰幅は、やや縮小してきている。さらに、これまでは資金が余剰の状態にあった家計で貯蓄率の低下が続いている。このため、将来的に企業が資金不足に陥った場合に、企業が必要な資金を調達できず、経済成長の阻害要因になるのではないかという懸念がある。
 家計の貯蓄率低下の要因をみると、消費性向の高い高齢世帯の増加による影響は着実に寄与しているものの、実はそれほど大きくない。むしろ、バブル崩壊後の賃金・雇用環境の悪化や金利低下による財産所得の受取の減少が家計の可処分所得に大きな打撃を与えている。家計にとって貯蓄を減少させるこれらの要因は、実は企業にとっては逆にコストの削減を通じて企業の利益を膨らませ、内部資金調達を押し上げる要因である。
 将来的に企業の資金余剰額が縮小し、資金不足に陥ったとしても、それが金利の上昇、配当金支払額の増加、雇用者報酬の増加といった家計にとって貯蓄を拡大させる要因による部分が大きければ、企業が資金調達難に陥るリスクは小さく、経済成長の阻害要因になるといった懸念は小さいと考えられる。

調査部
主席研究員
小林 真一郎

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