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復興から考える TPPとこの国のかたち

2011/07/01

 東日本大震災とTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉との関係について、巷ではかまびすしく論じられている。政府は、5月17日に発表した閣議決定『政策推進指針~日本の再生に向けて~』のなかで、「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉参加の判断時期については総合的に検討する」と述べ、TPPの判断時期を、当初予定されていた6月から延期することを正式に発表した。判断時期の延期という閣議決定が暗に示す通り、震災後も、TPP交渉参加の是非については激しい議論が継続されている。
 我が国がTPP交渉に参加すべきか否かについては、多くの論者が論じているような「東日本の農家」の復興問題としてではなく、むしろ日本全体の復興という観点から検討することが重要である。本稿では、日本の復興という観点からTPP参加の是非を検討するため、以下の順序で記述を進める。まず第二節では、議論の前提として世界経済の「現状」を確認するため、社会学者・N.ルーマンの言う「オートポイエーシス」概念を利用する。2000年以降、急速に進んだ技術革新とグローバル化により、世界経済は「オートポイエーシス」的システムとなりつつあること、さらに日本および日本経済は同システムの構成要素として組み込まれていることが確認される。そのうえで、世界経済が「オートポイエーシス」的システムとして機能しているなか、『帝国以後』の著者であるE.トッドや(TPP反対論者である)中野剛志のような保護主義的な主張は「ガス抜き」としての機能しか果たせないことが指摘される。
 次に第三節では、TPP参加の是非を巡る主要な論点である日本経済の活性化について検討する。「失われた20年」の原因であるデフレは、TPP反対論者が主張するような単なる需要不足が原因ではなく、需要と供給の両面における構造変化に起因することが明らかにされる。デフレが構造変化に起因する以上、TPP反対論者の主張とは異なり、公共投資による需要創出によっては、日本経済を活性化できないことが確認される。
 最後に第四節において、日本の復興という観点から、日本がTPP交渉に参加するべき理由について整理する。現在、環境規制が特定の技術に市場価値を与えはじめている。同様に、今後、環境規制以外にもさまざまな国際・国内規制が市場における価値創出や利潤獲得のための因子として活用されていくことが予想される。米国は、TPPにおいて「規制」を新しい価値創出の因子として策定しようとしている。世界経済の構造変化、それを踏まえた米国の戦略を考えると、我が国はTPPに参加し、21世紀型の価値創出の因子である「規制」を巡る競争に関与すべきであることが確認される。

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