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「両立」から「活躍」へ 女性活躍推進の今日的課題

2013/04/30
矢島 洋子

「女性活躍推進」は、古くて新しいテーマである。1985年に制定された男女雇用機会均等法により、募集・採用、配置・昇進の際の男女の均等な取り扱いが努力義務として企業に課されたことにはじまり、1997年の改正により、努力義務だった募集・採用、配置・昇進における差別が禁止され、違反についての制裁措置も設けられた。また、現にある差の解消を目的として、女性のみを対象とする働きかけを認める「ポジティブ・アクション(積極的改善措置)」が創設された。こうした法整備に対応し、大企業を中心に、採用や登用において、目標値を設定する等、女性割合を高めるための積極的な取り組みがみられたが、なかなか成果がみられなかった。大きな要因は、結婚・出産といった女性特有のライフイベントを乗り越えて、就業を継続するための両立環境が整っていなかったことである。そのため、一部の女性について採用や昇進への登用を推進しても、その裾野が広がらず、継続・拡大する取り組みにつながらなかった。

そのような中で、近年、ふたたび、企業の人事担当者の間で、「女性活躍推進」というテーマが注目されている。では、今なぜ「女性活躍推進」なのか。筆者は、大きく分けて、2つの潮流があると考える。ひとつは、市場ニーズの多様化や変化のスピードが速まる中で、従来と異なる新たな視点でのサービスやものづくりの必要性が高まり、これまでビジネスの世界の中で十分活用されていなかった女性の視点が注目されるようになったことである。それら女性の視点を活かしたものづくりを行った企業の中から、好事例が紹介されるようになったことで、さらに注目度が高まっている。

2つめには、仕事と子育ての両立支援関連の法整備が進み、企業における制度導入・運用が浸透してきたことと、ワーク・ライフ・バランス施策によって、残業削減や有休取得等、基本的な働き方の見直しが一定の進展をみせたことである。その結果、育児休業と育児期の短時間勤務制度を活用することで、実際に、出産を経て就業を継続し、「両立」をはかる女性が増えてきた。

こうした状況を踏まえ、今回の特集「女性の活躍推進」では、企業経営の視点から、女性活躍推進の現状と課題を提示している。

まず、「女性活躍推進フォーラム」では、「経営戦略としての女性活躍推進~組織が変わる 企業はもっと強くなる~」をテーマに、昨年度開催されたフォーラムの概要を紹介している。「基調講演」では、ライフネット生命保険株式会社の出口社長による「経営戦略としての女性活躍推進 ~今、企業がすべきこと~」と題し、女性活躍推進の話の前に、国際競争力が低下している日本において、人と違うインプットができること、すなわちダイバーシティ(多様性)のある組織をつくることの重要性が示され、現状、活かされていない女性人材を活用することが、今後の日本の「伸びしろ」になるという視点が提示された。ライフネット生命保険においても「ダイバーシティこそが成長のエンジン」との方針で、性別・年齢を問わない人材活用を進めていることが語られている。次に、弊社コンサルタントの有馬より、「東海4県の現状と実践に役立つ3つのポイント」と題された調査報告がある。

平成24年春に行った企業アンケート調査結果から、東海4県の企業の取り組みが全国に比べて遅れているのではないかという問題提起を行ったうえで、実際のコンサルティング事例をもとに、企業が取り組むべき実践ポイントを示している。最後に「東海企業における女性活躍推進の取り組み」と題されたパネルディスカッションの概要を紹介している。ジャトコ株式会社(自動車部品製造販売)、株式会社浜木綿(外食チェーン)、丸尾興商(管工機材等総合卸売業)の3社から、それぞれ女性活躍推進の取り組みが紹介された後、特徴的な取り組みとしての「メンター制度」や、共通の課題としての「休暇取得時の欠員補充」、「管理職を目指す意識の醸成」等について意見交換が行われている。

以降のレポートは、いずれも、日頃民間企業のコンサルティングを行っている弊社コンサルタントによるものであり、文献調査・アンケート調査等とコンサルティング事例を通じた知見が融合されている。共通しているのは、「女性活躍推進」には、「両立」と「均等」の2つのアプローチが重要であり、単に、長く勤めるだけではなく、いかに質の高い働き方をするかが重要であるという視点から、どのような制度設計や職場マネジメントを行うべきかを論じている点である。

塚田による「日本企業における職場マネジメントの特徴と女性活躍推進」では、両立施策と均等施策を両輪とする日本の女性活躍推進施策が、これまで遅々として進展しなかった要因を、「職場マネジメント」に着目して分析している。これまで、日本企業の強みでもあった有機的な柔軟性を持つ職場マネジメントが、女性の活躍をどのように阻んでいるのかを、「職務設計」、「コミュニケーション」、「キャリア形成」の3つの視点から説明し、従来の職場マネジメントの良さを残しつつも、それらが阻害してきたタイプの人材を活かすための見直し案を提示している。

佐野による「女性活躍推進において日本型人事マネジメントが阻害するポイント」では、女性活躍推進を、「継続就業」の次のステップとして、「管理職登用」や「経営層登用」に進めるための施策として、「人事制度」に着目した課題を提示している。具体的には、「年功的な運用」を残した「昇格制度」や「人事ローテーションによる人材育成システム」、基準や方法、フィードバックの曖昧さゆえに納得感の低い「評価制度」、年功的な基準を残した「給与制度」等の問題点と改善の視点が示されている。

米村による「看護職の確保・定着における課題とワーク・ライフ・バランス型人材マネジメントの必要性」では、女性就労者の割合の高い「看護職」に絞って、両立を支援する「制度の導入」に始まり、「仕事の見直し」、「評価・報酬の決定」、「キャリア形成支援」といった制度運用における重要ポイントが示されている。ひとつの職種に絞ることで、制度設計や、仕事の配分等についてより踏み込んだ改善提案を示すことができている。看護職の例ではあるが、担当クライアントを持つ営業職やシフト勤務を要する職種・職場等に応用できる提案でもあろう。

今回の特集は、実際に企業の経営や人事実務に携わる方々と、コンサルティングを通して企業の抱える課題に向き合うコンサルタントの視点からとらえた、まさに「今」の日本における「女性活躍推進」の課題とその処方箋である。そこには、これまで長きにわたって日本企業が取り組んできた「女性活躍推進」というテーマが抱えている共通課題とともに、過渡的な問題も含まれる。一見、以前よりも問題が深刻化したように見える面もあろうが、同じ「女性活躍推進」という言葉を用いていても、単に就業継続や管理職の「量」的な問題にとどまらず、実際に両立する女性が増えてきたことによって「働き方の質」や「キャリア形成」が議論されるようになったことは、大きな前進として肯定的にとらえるべきであろう。今、多くの企業が、「両立」から「活躍」へのステップに大きな壁を感じていると考えられるが、この壁の前で立ち止まるか、困難でも壁を乗り越えるかで、「女性活躍推進」がその企業の経営にとって真にプラスとなるかどうかが決まってくる。今回の特集から、壁を乗り越えるための具体的なヒントを得ていただくことができれば幸甚である。

共生社会部
執行役員
矢島 洋子

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