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2020年東京五輪を日本にとって意味あるものにするために、今こそ行動すべき時

2015/05/11

東京そして日本は、オリンピックとパラリンピックの開催権という世界スポーツ における最高の賞を手中に収めました。そして今、バルセロナやシドニー、ロンド ンのように、この大会が国内外で受け継がれ続けるようなレガシーを残せるかどう か、ということが問われています。各国や都市が羨望するこの最大の好機が、十分 な成果を挙げることなくただ終わってしまわないだろうか? 7 年間におよぶ投資 と多大な努力が、たった数週間、数ヵ月で忘れられてしまう結果にならないだろう か? 新しい世代のためのより良い未来が否定されることになってしまわないだろ うか? そのような問いかけがなされています。

オリンピックは、これから2020 年まで、そしてその後何十年もの間、日本全国 に大きな利益をもたらす空前の好機となるでしょう。五輪開催都市が必要とするスポーツや関連インフラへの 投資は、人材育成への投資と同様に、大きな経済的・社会的財産を生むきっかけとなるはずです。そして、日本 が世界から脚光を浴びることは、日本という国とその産業、文化、そして国民性を世界へアピールする最大の舞 台が用意されることを意味するはずです。

では、こうした「~なるでしょう、~なるはずです」といった表現を、どのようにすればもっと断定的な言い方 に変えることができるのでしょうか。まず最初にするべきことは、他の開催都市がこれまで何を運営してきたの か、そしてさらに重要なことは、それらをいかに運営してきたのかを真に理解することです。この点については、 日本は幸運です。なぜなら、直近のオリンピックである2012 年ロンドン五輪が最良の事例だからです。

2020 年東京五輪招致団の多くが直接経験できたのがこの直近の大会であり、日本と自然に共感し合い、相 互に理解し合える国で行われ、開催に関する記録も十分に残されています。2012 年のロンドン五輪を振り返 ると、2020 年東京五輪の主催関係者(政府関係者から、東京以外の各県における産業界や市民活動のリーダー たちまで、このオリンピックから恩恵を受け得る人すべて)が特に注目すべき3 つの領域があるように思えます。

第一に、全国規模の経済的なレガシーがまず挙げられます。2020 年のオリンピックは厳密に言えば東京の ものですが、正しい方策をもってすれば、日本全国がこの好機の恩恵を受けることになるでしょう。2012 年ロ ンドン五輪が市・地域・国家レベルでの戦略的な計画や、国全体の関心を引きつけるような広報活動によって英 国全土に恩恵をもたらしたように、2020 年東京五輪も同様の効果を実現できる可能性があります。

英国全土の企業や住民が、オリンピック関連活動への参加を奨励されました。1,500 の英国企業が73 億ポ ンドを超えるオリンピック関連の契約を獲得し、2005 年から2012 年までの深刻な経済停滞期における雇用 の創出や確保に役立ちました。加えて、オリンピック開催前、そして開催中に行われる大規模な文化的催しやス ポーツイベントが全国で計画されました。文化オリンピアードでの催しは、英国住民の多くにとって夏の思い出 のハイライトとなりました。

2012 年ロンドン五輪は、英国のイメージや製品・サービスを開催地および国を挙げて世界へプロモートす る絶好の機会にもなりました。英国政府によるGREAT Britain キャンペーンでは、英国が旅行・勉学・ビジネ スにとって素晴らしい国であることを売り込みました。英国貿易投資総省は、2016 年までに110 億ポンドの 経済的利益を目標としていましたが、英国経済は2014 年末までにすでに142 億ポンドもの利益を得ていま す。

2020 年までのロンドン五輪の経済効果は、経済的付加価値が280 億ポンドから410 億ポンドになると 推定されています。この額は開催費用をはるかに上回り、これによって最大89.3 万人におよぶ雇用の創出が可 能になると考えられています。また、2014 年7 月の英国貿易投資総省の対内投資年次報告書(UKTI Inward Investment Annual Report)では、2013 年から2014 年における海外からの記録的な投資が示され、英国 内で1,700 を超える事業が行われ、6.6 万人の新規雇用を創出し、4.5 万人の職が保護されたことが報告され ています。

英国経済は、オリンピックに関連する領域において上昇し続けています。2014 年ソチ冬季オリンピック・ パラリンピックと2018 年ワールドカップ・ロシア大会では、60 の契約を英国企業が勝ち取りました。加えて、 英国企業は、2014 年ワールドカップ・ブラジル大会と2016 年リオ・オリンピック・パラリンピックにおい ても、合計1.2 億ポンドの契約を獲得しました。弊社Seven46 がこうした企業の一社であることを、私は大変 嬉しく感じています。

2020 年東京五輪は、日本が経済を発展させ、大イベント開催の世界リーダーの一員となり得る類のない機 会です。2012 年以降の英国企業と同じように、東京五輪が開催されることによって、日本企業は自分たちの専 門性を生かし、さまざまな産業において好機に乗じることができるでしょう。また、日本企業と英国企業が協力 し合うことにもなるでしょう。私は、Seven46 がその一員となることを望んでいます。そのためにも、私たち は現在、東京に事務所を持ち、2020 年に向けて事業構築を進めています。

第二に、2012 年ロンドン五輪では、ボランティアの新時代を見ることができました。ロンドン五輪におけ る最大の成功のひとつは、全国規模のボランティア制度でした。24 万人を超える人々が「ゲームズ・メーカー (Games Maker)」に応募をし、その中から最終的に7 万人が選ばれました。その内40%は過去にボランティ アの経験がまったくない人々でした。

この7 万人のボランティアは、延べ100 万時間を超える訓練を受けた後、専門的な任務、あるいは一般の方 を相手にするサービス提供ためのさまざまな役割に分かれ、延べ800 万時間の活動を行いました。ロンドンの ボランティアたちは、おそらくどの代表選手よりも、まさに「五輪の顔」と言える存在になったのです。

ゲームズ・メーカーたちは、2012 年ロンドン五輪の雰囲気を変え、開催都市に息吹を吹き込み、世界に真 のロンドンを示すことに貢献した功績が認められています。2020 年の東京五輪も同様に、日本全国からボラ ンティアを動員し、大会だけでなく、日本社会に多大な貢献をしてもらうような機会となるでしょう。こうした ボランティアたちは、大会後も当然、さまざまな催し等でサポートを続けてくれることでしょう。英国はオリン ピック以来、ボランティア文化に対する再認識がさまざまな効果を生み、今日ではより多くの人々が地域のコ ミュニティーのために自分の時間を捧げています。同様のことが日本でも起こり得るでしょう。

最後に、オリンピックは、世界に自国を見てもらう絶好の機会です。開催都市・開催国にとってこの大会は、 世界に最大の長所を示し、自らに対する時代遅れの考えを払拭し、近代的な新しい自分たちの国を外へと売り込 む機会です。

2012 年ロンドン五輪には、記者8,000 人、報道関係者1 万2,000 人が集まりました。世界からのメデイ アは、国やその国民に対する認識を変える手助けとなります。カナダの新聞Tronto Sun のSteve Simmons 記者は、「ロンドン五輪が素晴らしいのは、スポーツに関することだけがすべてではありません。それは、自国を 外に披露しようとし、そしてそれをまさに実行した点にあります」と伝えました。

Simmons 記者の見解は、2013 年1 月から7 月までに、英国における旅行者の消費が112.4 億ポンドと いう記録的な結果を残したことにも表れています。これは、2012 年の同時期と比べて13%も高い数値でし た。海外からの訪問者数が増加しただけでなく、より多くの消費が行われました。2013 年7 月までの12 ヵ 月間における英国旅行者1 人当たりの消費は平均629 ポンドで、前年の12 ヵ月間よりも7%多い金額でした。

英国国民にも認識の変化があり、大会後に質問を受けた国民の81%が、オリンピックはロンドンと英国の世 界に対するイメージを向上させたと述べました。2012 年ロンドン五輪の後に行われた調査では、99%の報道 関係者が、オリンピックを契機に自分の国から英国への訪問者が増加するだろうと回答しています。

この結果から考えられる明らかなことは、2020 年東京五輪開催が、長時間にわたって自分たちの土地を世 界へ広める機会をもたらすことになることから、日本の各都市・県・地域が、自分たちの土地をどのようにマー ケティングするべきかを考える引き金になるということです。

こうした3 つのレガシーはすべて、あるひとつのことによって実現しました。それは、ロンドンの成功を支え たすべてとも言えるもの、つまり開かれた視野と継続的なコミュニケーションがすべてのレベルにおいて確保さ れるように、早期から明確な計画が立てられていたことです。そのことによって、大会に関わる誰ひとりとして、 大会の成功に自分たちが一員として貢献できないのではないかと疑念を抱くことはありませんでした。

私は、2012 年ロンドン五輪招致団の一員で、弊社は大会の成功に貢献をしました。それ以来、2016 年リオ 五輪の招致においても重要な役割を果たしたチームを率い、直近の2020 年東京五輪については、戦略的広報 主任顧問として同様の活動をしてきました。私の目的は、日本のさまざまな組織が人生に一度のこの機会を最大 限に生かせるよう、自らの専門知識や経験を皆様にご紹介することです。

2020 年東京五輪は、日本のさまざまな分野の組織に実に豊富な機会を提供します。学生、大学の学部長、専 門技能を持った労働者、野心的な事業を行っている会社経営者、新進気鋭の選手あるいはコーチ、とにかく誰で あろうと、各自が、そして日本全体が一団となって、招致活動のスローガンであった「未来をつかむ(Discover Tomorrow)」を実現するために専門知識や好機を追求し続ければ、オリンピックは必ず実り多い、目的に適った ものとなるでしょう。

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