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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が日系企業活動にもたらす影響

2016/08/09

環太平洋戦略的経済連携協定(以下TPP)交渉は、2015年10月にアメリカ合衆国のアトランタで開催されたTPP閣僚会合において大筋合意が発表された。

経済力・軍事力を背景に、2049年の建国100周年を見据えながらチャイニーズスタンダードによる世界の覇権を狙う中国に対して、グローバルスタンダード、いわゆる自由競争の維持・拡大を狙うアメリカ合衆国を中心に、アジア大洋州でブロック経済を構築することで中国へのけん制作用を期待する意味合いが強い、バランスオブパワーの概念が盛り込まれた協定とTPPを位置づけることができる。

アジア大洋州でグローバルスタンダードを維持できなければ、アジアインフラ投資銀行(以下AIIB)および一帯一路構想を掲げ、ユーラシア大陸を中心にチャイニーズスタンダードの浸透を図る中国に対して世界的な対抗軸が不在となる恐れが出てくる。対抗軸不在となれば、中国の世界における影響力は拡大の一途をたどり、従来のグローバルスタンダードの転換が迫られる可能性が出てくることを鑑みると、2016年11月6日のアメリカ合衆国大統領選挙でよほどの波乱要因がない限り、TPPは正式発効の方向に進むだろう。

TPPの正式発効は、日系企業にとっては大きく3つの影響をもたらす。メリットとしては、事業規模の拡大と、生産拠点見直しによるコスト削減の2点が挙げられる。一方、デメリットとしては、海外輸入品の増加にともなう競争激化・収益性悪化の可能性が挙げられる。具体的な影響については産業ごとに異なるものの、特に影響を受ける可能性がある分野として食品分野が挙げられる。

食品分野においては、国内市場では重点5品目を中心に、各業界の川上から川下まで海外輸入品の増加にともなう収益性悪化の影響を被る可能性が想定される。もちろん、その影響は政府の各種支援措置により軽減される可能性もあるが、ただでさえ貿易自由化率が他のTPP加盟国と比べて低い状況を鑑みると、積極的な支援措置を講じる余地がどの程度あるのか疑問だ。そのため企業活動の観点からは、政府の各種支援の充実を待つよりも、米国やオセアニア等への海外への生産拠点移転や、調達コストのコントロールを目的とした海外調達拠点の強化に取り組むことで、中長期的な競争力強化を志向することが重要となるだろう。

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