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東海環状自動車道全線開通による全国への経済インパクトは50年間で約27兆円

~「効果を出す」意識のもと、ストック効果最大化に向けた取組みが重要~

2019/11/05
宮下 光宏 右近 崇

1.はじめに

本研究は、東海環状自動車道の整備が進む中京圏を対象として、東海環状自動車道の「整備有り/無し」を変数とした回帰分析をもとに、これまでの東回り区間による製造業及び観光への影響を定量的に推計した。この推計結果を用いて、今後の全線開通により見込まれる製造業及び観光への影響として、各指標の変化(増加)を簡便的に算出し、需要増加により期待される生産誘発効果について、中京圏を含む地域間産業連関モデル(消費内生化)を用いて試算した。新しい令和の時代を迎え、東海環状自動車道の全線開通が現実となって迫る今、中京圏をはじめとする地域経済にあたえる経済インパクトを提示し、開通効果を早期にかつ最大限に発揮させるため、広域的な観点に基づく地域連携等の重要性について論じたい。

2.社会資本整備を取り巻く環境
(1) 社会資本整備による効果の概要
社会資本整備には、我々の生活の質や社会経済活動の向上を図り、自然災害などの脅威に対して安全・安心を確保する役割・効果が期待されるが、その効果はストック効果とフロー効果に大別される1。フロー効果は、公共投資の事業そのものにより、生産・雇用・消費等の経済活動の需要が派生的に創出され短期的に経済全体を拡大させる効果である。それに対してストック効果は、整備された社会資本が機能することにより、中長期的にわたって、経済活動の向上を図り、国民生活の質の向上や自然災害等の脅威に対して安全・安心を確保するなど、社会資本の機能として本来的に期待されている効果を示す。

(2) 社会資本整備のストック効果最大化の必要性
人口減少社会と厳しい財政制約に直面する我が国において、引き続き社会・経済を支える基盤として社会資本の役割を発揮していくためには、ストック効果の最大化に向けた「機能性・生産性を高める戦略的インフラマネジメント」2の重要性が増している。そこで「効果が出る」という発想から「効果を出す」への意識転換を行い、これまでのストック効果の知見を活用して、今後の事業への反映や事業横断的な情報共有・横展開を図ることが必要3とされる。東海環状自動車道の整備が進む当地においてもストック効果最大化に向けた能動的な取り組みが必要であると考える。

3.東海環状自動車道整備によるストック効果
(1) 中京圏の環状道路「東海環状自動車道」の概略
東海環状自動車道の計画は、古くは、東海環状都市帯整備構想4に端を発し、都市帯を形成するための基盤となる道路インフラとして位置付けられた。伊勢湾岸自動車道と一体となって、名古屋都心部から約30~40kmの距離に位置し、東海3県(愛知県・岐阜県・三重県)の豊田、岐阜、大垣、四日市などの諸都市を環状に連結する高規格幹線道路である。2005年に豊田市から岐阜県関市までが開通し、その後、美濃関JCTから関広見ICなど順次開通した。2019年度には、関広見ICから山県IC間、大垣西ICから大野神戸IC間が開通する予定で、国の財政投融資を活用し、東海環状自動車道の全線開通に向けて、鋭意事業が進められている。

(2) 東回り区間の開通により発現したストック効果
東海環状自動車道東回りの開通から10年以上が経過し、様々なストック効果が確認されている。ストック効果については「東海環状西回り利活用促進会議」が作成した「東海環状道利活用ポータル」5で紹介されている。例えば、産業面では、「新たな企業立地に伴う雇用の促進」や「生産性の向上」、観光面では、「昇龍道プロジェクトの支援」や「観光入込客の増加」などのストック効果が挙げられている。 実際、東回り区間の沿線地域における製造品出荷額等の推移をみると、2008年頃の世界同時不況で大きな落ち込みが見られるものの、総じて増加傾向で推移している。また、東回り区間の沿線地域の観光入込客数についても、景気や天候、イベントの影響による増減はみられるものの総じて増加傾向を示している6
現象面の変化の事象、インタビュー調査結果など、既存調査からは多様なストック効果が確認できていることから、東海環状自動車道の東回り区間の開通は、地域経済に相応の影響を及ぼしていると考えられる。

4.東海環状自動車道の全線開通による地域ポテンシャル分析
(1) 分析の考え方
東海環状自動車道の東回り区間のこれまでの開通に伴う影響について、沿線地域等における整備有り/無しの状況をダミー変数とする重回帰分析により開通インパクト傾向を推計した上で、それを用いて全線開通に伴う製造業及び観光への直接的な影響を簡易的に試算する。さらに、中京圏とその周辺地域を区分した地域間産業連関分析モデルを構築し、産業への誘発効果、地域間への誘発効果を分析する(図 2参照)。

(2) 分析モデル
既往研究7を参考に、中京圏-東海3県-全国 地域間産業連関分析モデル(34部門、2010年)を構築した。この分析モデルを用いることで、中京圏内の各産業部門間における取引関係だけでなく、中京圏8と中京圏外全国との取引関係を把握することができ、中京圏と全国への経済インパクトを同時に求めることが可能9となる。

(続きは全文紹介をご覧ください。)

 

1 インフラストック効果とは.国土交通省総合政策局ホームページ(閲覧2019/10/07)
2 第4次社会資本整備重点計画(2015年9月18日閣議決定)
3 社会資本整備・交通政策審議会交通体系分科会計画部会専門小委員会「ストック効果最大化に向けて~具体的戦略の提言~」(2016年11月)
4 国土庁・農林水産省・通商産業省・運輸省・建設省(1984)「東海環状都市帯整備構想」(1982~1983年度に5省庁で東海環状都市帯整備計画調査が実施)
5 東海環状西回り利活用促進会議「東海環状道利活用ポータル
6 経済産業省「工業統計」、岐阜県「観光入込客統計調査」、愛知県「観光レクリエーション利用者統計」
7 石川良文(南山大学)「Nonsurvey手法を用いた小都市圏レベルの3地域間産業連関モデル」、土木学会論文集No.758/Ⅳ-63,45-55,2004,4.
8 本研究では中京圏を東海環状自動車道沿線及びその内側の市町村とした(図 3参照)。
9 産業連関分析の詳細は巻末参照。
研究開発部
主任研究員
宮下 光宏
研究開発部
主任研究員
右近 崇

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