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イスラエルにおける研究開発型スタートアップ支援施策のポイント

岐路に立つ科学技術・イノベーション政策①

2020/06/18
馬場 康郎 北 洋祐 大野 泰資

近年、イノベーション創出において、研究開発型スタートアップへの期待が非常に高まっており、我が国においては、研究開発型スタートアップを含む中小企業のイノベーション創出への支援の強化を念頭に、日本版の中小企業技術革新制度(SBIR)の見直しが進められている。中小企業技術革新制度とは、中小企業等による研究開発活動の促進を図るために、中小企業等の実施する研究開発活動に対して補助等を行うものであり、研究開発のための補助金・委託費等の中から、中小企業等が活用できるものがSBIR特定補助金等として指定されてきた。すなわち、①中小企業の振興、②イノベーションの創出、という2つの側面を有する制度である。現在、研究開発型スタートアップを含む中小企業のイノベーション創出に対して、更なる効果的な支援を実施すべく検討が行われている。
研究開発型スタートアップを含む中小企業のイノベーション創出への支援については、諸外国においても様々な取組がなされており、我が国の政策を考える上でも、諸外国の状況を調査・分析することは有用であると考えられる。そこで、本シリーズでは、「岐路に立つ科学技術・イノベーション政策」と題し、諸外国の事例として、①イスラエル、②アメリカ合衆国、③EUを取り上げ、各国における制度の特徴や日本への示唆を導出することとしたい。
研究開発型スタートアップがイノベーション創出にあたって大きな役割を果たし、国全体の産業振興に繋がっている例としてイスラエルが挙げられる。イスラエルでは、産官学が連携し、国を挙げて研究開発型スタートアップの支援を進めている。本稿では、イスラエル政府でイノベーション政策についての中心的な役割を担っているイスラエル・イノベーション・オーソリティの研究開発型スタートアップ支援プログラムを中心に、イスラエルにおける研究開発型スタートアップ支援施策のポイントを整理した。

<本稿のポイント>

・2016年に経済省主席科学官オフィスを改組して設立されたイスラエル・イノベーション・オーソリティ(Israel Innovation Authority)が研究開発型スタートアップ支援政策の中心的な役割を果たしている。

・イスラエル・イノベーション・オーソリティによる2019年の補助金等執行状況について見ると、応募が2,951件、採択プロジェクトが1,606件、補助金の金額合計がNIS 17.3億(約540億円)となっている。補助金の支給分野を見ると、NIS 5.3億がライフサイエンス分野、NIS 4.2億がAI分野に向けられたものである。また、初めて応募した企業への支給額がNIS 4.4億となっており、補助金総額のおよそ4分の1が初回応募企業への支給となっている。局別にみると、スタートアップ局の補助金予算がNIS 4.84億と全体の4分の1以上を占めている。

・研究開発型スタートアップに特化した資金支援プログラムとして、①Tnufa Incentive Program、②Incubators Incentive Program、③Early Stage Companies Incentive Programがある。これらは、対象とするステージ、マッチング拠出の割合や支援金額が異なり、同一企業が成長段階に応じて複数のプログラムを利用することができるようになっている。

・イスラエルの研究開発型スタートアップ支援プログラムの特徴としては、①スタートアップに特化したプログラムの規模が大きいこと、②スタートアップの発展段階に応じた体系的な支援プログラムが構築されていること、③政府と他のアクターとの連携が前提となっていること、が挙げられる。

・我が国においても、第四次産業革命の進展を見据え、イノベーション創出の観点から研究開発型スタートアップの育成への期待が高まっている。新たなSBIR制度の創設など、我が国においても研究開発型スタートアップ支援に向けた取り組みが着実に進められており、大いに期待が集まるところである。こうした取組に加え、将来的には、イスラエルの例を参考に、①研究開発型スタートアップ支援の規模の拡大、②多様かつ体系的な支援プログラムの整備、③エコシステム形成への支援強化、といった観点から、更なる制度の拡充を検討すべきではないか。

(続きは全文紹介をご覧ください。)

※本レポートは、シリーズ企画「岐路に立つ科学技術・イノベーション政策」の第1弾レポートです。各レポートは独立していますが、よろしければ第2弾「近年の米国のSBIR制度の評価と運用に見る研究開発型スタートアップ支援策の方向性」および、第3弾「中小企業・スタートアップ向け補助金執行の高度化手法「カスケード・ファンディング」導入のすすめ」も併せてお読みください。
経済政策部
副主任研究員
馬場 康郎
経済政策部
上席主任研究員
大野 泰資

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