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近年の米国のSBIR制度の評価と運用に見る研究開発型スタートアップ支援策の方向性

岐路に立つ科学技術・イノベーション政策②

2020/06/18
池田 貴昭 大野 泰資 北 洋祐

近年、イノベーション創出において、研究開発型スタートアップへの期待が非常に高まっており、我が国においては、研究開発型スタートアップを含む中小企業のイノベーション創出への支援の強化を念頭に、日本版の中小企業技術革新制度(SBIR)の見直しが進められている。中小企業技術革新制度とは、中小企業等による研究開発活動の促進を図るために、中小企業等の実施する研究開発活動に対して補助等を行うものであり、研究開発のための補助金・委託費等の中から、中小企業等が活用できるものがSBIR特定補助金等として指定されてきた。すなわち、①中小企業の振興、②イノベーションの創出、という2つの側面を有する制度である。現在、研究開発型スタートアップを含む中小企業のイノベーション創出に対して、更なる効果的な支援を実施すべく検討が行われている。
研究開発型スタートアップを含む中小企業のイノベーション創出への支援については、諸外国においても様々な取組がなされており、我が国の政策を考える上でも、諸外国の状況を調査・分析することは有用であると考えられる。そこで、本シリーズでは、「岐路に立つ科学技術・イノベーション政策」と題し、諸外国の事例として、①イスラエル、②アメリカ合衆国、③EUを取り上げ、各国における制度の特徴や日本への示唆を導出することとしたい。

本レポートでは、日本版SBIRのお手本となった米国SBIR (Small Business Innovation Research) 制度がどのように評価・分析されているか、そして近年の発展の方向性として重点化されている商業化・事業化の支援がどのように行われているかを詳細に紹介することにより、日本の研究開発型スタートアップ支援施策への示唆を整理した。

<本稿のポイント>

・米国のSBIR制度を分析した実証研究を紹介する。さらに近年の発展の方向性として重点化されている商業化・事業化の支援がどのように行われているかを詳細に紹介し、日本の研究開発型スタートアップ支援施策への示唆を整理した。

・米国SBIRは近年、特に商業化・事業化の支援が拡充されている。TABA (Technical and Business Assistance) と呼ばれる制度がSBIR制度の中で整備されており、SBIRに採択された中小企業は、技術的アドバイス、商品販売支援、知的財産の保護、市場調査、市場検証、規制・製造計画、技術・事業データベースへのアクセス等の専門サービスを受けることができる。

・SBIRと連携している制度としてI-corpsというイノベーションの初期段階における課題の解決を支援するトレーニングプログラムが複数の省庁で導入されており、ビジネスモデルの開発と顧客開拓の重要性について、起業を志向する研究者を教育するためのカリキュラムが用意されている。

・Howell (2017) の示唆と米国SBIR制度の近年の動向から得られる示唆は次のように整理できる。

▸第1に、中小企業向けの研究開発に対する資金的支援は、少数の企業への多額の支援よりも、より多くの企業のPoC (Proof of Concept: 概念実証)の支援に注力すべきである。

▸第2に、PoCを成功させ、VCから資金を調達できるようになるまでにまとまった資金を必要とする分野のスタートアップを創業期から支援することに重点をおくべきである。

▸第3に、創業期のスタートアップは、様々な知見やノウハウが不足しているので、政策の効果をさらに高めるためには、資金的な支援と同時に、I-corpsやTABAのような外部民間間企業を活用した商業化・事業化支援を組み合わせて提供していくことが有効と考えられる。

▸第4にEBPMの観点から、後から施策の効果を容易に検証し、施策の改善ができるように、データ収集方法も考慮した上で制度設計を行うべきである。

(続きは全文紹介をご覧ください。)

※本レポートは、シリーズ企画「岐路に立つ科学技術・イノベーション政策」の第2弾レポートです。各レポートは独立していますが、よろしければ第1弾「イスラエルにおける研究開発型スタートアップ支援施策のポイント」および、第3弾「中小企業・スタートアップ向け補助金執行の高度化手法「カスケード・ファンディング」導入のすすめ」も併せてお読みください。
経済政策部
上席主任研究員
大野 泰資

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