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教員への「疑いの文化」のイングランドと、「信頼の文化」のスコットランド。英国(UK)の教員は専門職として学び続けられるのか。

諸外国の継続的専門能力開発(CPD)から見る シリーズ第2弾

2020/11/06
鈴庄 美苗

【要旨】

「諸外国の継続的専門能力開発(CPD)から見る」シリーズの第2弾では、イングランド、ウェールズ、スコットランドの3地域のCPD(Continuous Professional Development)政策に着目し、本稿ではCPD政策を取り巻く教員養成政策について概括した後、3地域のCPDの制度(政策立案の立場)と、現場(実践家の立場)、研究(研究者の立場)から既往研究を調査した。その結果、イングランドとスコットランドのCPD政策には開きがあり、その中間にウェールズが位置するように見える。

3地域に共通的であったのは、教職基準(スタンダード)に基づくCPDが行われていることと、その中で協働やメンターなどが重視されている点だ。しかし、教職の職能団体であるGTC(General Teaching Council)については、スコットランドでは独立性を増し一層CPD政策を進めているのに対し、イングランドでは廃止、ウェールズでは他機関と統合されている。この様子からも、教員に対する「専門職」としての見方は地域によって異なる様相を呈している。

スコットランドにおけるCPDでは、最も重要な価値観の一つとして「信頼の文化と雰囲気」を基盤に据えている。また研究者においては協働性とともに「非公式」や「偶発性」も重視しており、このためには教員の専門職としての信頼が重要になると強調していることも特徴的だろう。

一方で、イングランドのCPDに警鐘を鳴らす論文では「疑いの文化」の上でCPDが維持することへの難しさを提起しており、NPM(New Public Management)の文脈と共に、厳しい説明責任にさらされる中で、教員がCPDを行うことへの懸念を示している。

ウェールズでは、権限移譲後の2000年代には「信頼と協調」を主とした教員労働政策が採られるが、2010年代以降はPISA(Programme for International Student Assessment)等の影響もあり、説明責任の要求の強い政策に移行しつつある。新任教員への専門性開発に注力している等、イングランドと類似する方向性もあれば、一方で、アクションリサーチなど教員の研究力の重視や、オンラインでのCPDの推進等を図っており、スコットランドのCPD政策と類似している部分もある。

3地域とも教職への入職者の充足率に課題を抱えている中で、イングランド以上に充足率の低いウェールズでのCPD政策がイングランドの流れに傾倒していくのか、充足率が芳しくないスコットランドが引き続き独自路線のCPD政策を維持することができるかは注目すべき点だろう。

上記の調査結果から、専門職ではなく実務家として教員養成を志向していると指摘のある日本について、(1)NPMの文脈でのCPD政策の難しさや説明責任の要求の危うさを示した。また、新任教員の採用倍率の低下等の量的確保の課題が深刻になりつつある日本における(2)量的確保の課題と、職能団体の存在からCPD政策の発展との関係性を見た。そこから、日本において今一度、専門職として自律的に活躍する教員のためのCPDを担保するためには、現場の実態や学校文化を踏まえたCPDを政策に繋ぐことのできる職能団体が必要になるのかもしれない。

続きは全文紹介をご覧ください。

【ここまでの関連レポートはこちらから】
国際教育学会と教育先進国シンガポールから見る、危機の時代を生き抜く教員を支えるキーワード「CPD」とは
諸外国の継続的専門能力開発(CPD)を見るシリーズ 第1弾
(2020年10月20日)

公共経営・地域政策部
副主任研究員
鈴庄 美苗

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