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企業間連携によるサステナブル活動 ~各国で進むアライアンス事例

シリーズ「食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ」④

2021/11/25
清水 昂星

連載「食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ」では、食品産業界における食品パッケージのプラスチック包材廃棄物を手掛かりに、今後の日本企業に求められる対応のあり方や取り組みの可能性などを深掘りしていく。本稿では、企業間連携によるサステナブル活動として、各国で進むアライアンス(連携)事例を紹介する。

1. 目標達成に追われるグローバル企業

既に当連載の第1~3回(第1回「転換点を迎えたビジネスデザイン」(2021年11月11日付掲載)、第2回「途上国の出口戦略~カスケードリサイクルの可能性」(2021年11月15日付掲載)、第3回「途上国の廃棄物回収~ウェイストピッカーと企業動向」(2021年11月24日付掲載))にて説明しているように、近年、SDGs(持続可能な開発目標)に対する機運は高まる一方である。当然ながら、食品や飲料、消費財などの商品に多くのプラスチック包材を使用・提供しているメーカーは、プラスチック廃棄量削減に向けた目標を掲げている。世界各国に商品を展開するグローバルメーカーの取り組みの中でも、特に途上国においては、目標と現実の間にギャップが生じているケースが少なくない。具体的には、途上国の廃棄物回収やリサイクルのインフラ整備が、先進国と比較して遅れていることが1つの要因である。包材をリサイクル可能なものに置き換えたとしても、最終的にリサイクルがなされるためには、使用済みの包材を回収し、さらにはリサイクル処理を施す仕組みが必要不可欠である。この根本的な課題を解決するために、先進的なグローバルメーカーは、自社単独では実施が難しい国においても、ローカルの廃棄物事業者等と連携(アライアンス)し、手を取り合いながら取り組みを加速させている。

連載第4回となる本稿では、途上国を中心に、他のステークホルダーを巻き込みながらサステナブル活動を推進している事例を分析する。同時に、目標と現実とのギャップに苦しむグローバルメーカーへの示唆として、企業(及び団体)間連携(以下、「企業間連携」)の成功パターンについて考察していく。

2. サステナブル活動を成功へと導く企業間連携

企業間連携の在り方を考察するうえで必要となるポイントが2つある。それは「誰と組むべきか?」そして「どの領域で組むべきか?」である。

(1) 誰と組むべきか?

他の企業と連携を組むといっても、どこの誰と組めばいいのだろうか。このような場合には、まず「グローバル主導」、もしくは「ローカル主導」で整理するとわかりやすい。グローバル主導とは、本社が欧米発の先進的な技術を持つグローバル企業や、世界中にネットワークを持つ団体と組むといったケースである。一方、ローカル主導とは、各国の廃棄物回収やリサイクルを担う事業者、現地住民とコネクションを持つ団体などと組むケースを指す。グローバル主導の場合は「各国横断的」に、ローカル主導の場合は「対象国に根差した」活動が実施しやすい、というメリットがある。

(2) どの領域で組むべきか?

2つ目のポイントとして、連携はどの領域で組むのがいいのだろうか。これは、プラスチック包材をリサイクルするまでに必要なプロセスに当てはめて考えることができる。以下の図表1は、1つ目のポイントである「誰と組むか」を横軸に、リサイクルまでのプロセスを縦軸に定めて整理した概念図である。プロセスは、1)啓蒙活動 2)研究開発 3)廃棄物の回収・リサイクルの順に大別できる。

たとえば、啓蒙活動を行う場合、世界各国に影響力を持つグローバル団体と連携することで、各国横断的に情報発信が可能になる。一方で、現地住民の環境意識を根本から変えていくという視点から考えると、ローカルネットワークを持つ企業や団体と共に啓蒙活動を実施していく選択肢もある。また、廃棄物の回収・リサイクルに焦点を当てた場合、対象国のインフラに入り込む手段が重要であるため、ローカルの廃棄物処理業者やリサイクル業者との連携が成功の鍵となる。

このように各国でサステナブル活動を推進するにあたって、グローバル主導のアライアンスを構築すべき活動と、ローカル主導で構築すべき活動がある。取り組むステップと各国の実情に応じて、アライアンスパターンを選択することが、サステナブル目標達成への重要なポイントである。

【図表1】リサイクルまでのプロセスごとにみた企業間連携パターン

図 リサイクルまでのプロセスごとにみた企業間連携パターン

(出所)各種資料をもとに当社作成

ここからは、各国でアライアンスを上手く活用している先進的な企業事例を紹介し、上述したパターンと照らし合わせながら解説していく。

3. プロセス・領域別の事例

(1) 啓蒙活動

■グローバル主導:エレン・マッカーサー財団
エレン・マッカーサー財団は、2010年9月に設立されたプラスチック廃棄物削減を目指すグローバル団体である。ネスレ(Nestlé)やユニリーバ(Unilever)、ペプシコ(PepsiCo)など、多くのグローバルメーカーが参加しており、参加企業に対して2025年に向けたプラスチック廃棄物削減目標の公表、行動計画の申告を要求している。各企業の目標達成状況を毎年公開しているため、SDGsに関心の高い世界中の投資家たちから注目を集めている。企業単独のパブリシティでは対外公表力は限定的であるが、発信力を持つグローバル団体に参加することで、サステナブル活動を広くステークホルダーにアピールすることができる。

■ローカル主導(フィリピン):プラスチック フラミンゴ(The Plastic Flamingo)
プラスチック フラミンゴは、フィリピンの首都マニラに拠点を置く、主に海洋プラスチック汚染防止を掲げる環境保護団体である。ローカルの団体だが、食品メーカーのモンデリーズ(Mondelēz International)や化粧品メーカーのロレアル(L’Oréal)、化学メーカーのビーエーエスエフ(BASF)など、多種多様な業界からグローバルメーカーが参加。海洋プラスチックを回収するボランティア活動や、学校・民間企業向けセミナーなどを開催している。これらの活動で回収されるプラスチックの量は限定的ではあるが、現地住民をボランティア活動に直接巻き込むことで、彼らの環境保護意識を地道に醸成している。

(2) 研究開発

■グローバル主導:フラウンホーファー研究機構
消費財メーカーのユニリーバは、ドイツの世界的研究機構であるフラウンホーファー研究機構と共同し、リサイクル可能な多層包材プラスチックを開発している。フラウンホーファー研究機構はドイツ各地に75の研究施設を構え、約3万人のスタッフを擁する巨大組織で、さまざまな分野において最先端の研究・開発を行っている。新たに開発された「CreaSolv® Process」は、多層包材でありながらビニール袋への再生が可能である。元々、不純物が混合する多層包材はリサイクルが困難であったが、プラスチック溶解技術を用いることでリサイクルを可能にした。ユニリーバは2017年から、まずはインドネシアのパイロットプラントで「CreaSolv® Process」の実証実験を開始しており、将来的には他国への横展開を目指している。最先端の研究機構と共同開発した技術をグローバル展開することで、各国のサステナブル活動全体に追い風を与えることができるだろう。

■ローカル主導(トルコ):ポリナス(Polinas)
2018年からトルコの複数の民間企業では、ユニリーバの有名ブランドであるクノール(Knorr®)粉末スープの包装を、リサイクル可能な素材へ置き換える取り組みを始めている。既に、ポリプロピレン由来の単一原料から包材を生成することで、リサイクル難度を大きく下げることに成功した。特筆すべき点は、粉末スープの長期保存寿命を維持したまま、包材置換に成功したことである。包材開発には、現地包材メーカーで食品軟包材に関する技術を持つポリナスをはじめ、複数の民間企業が協力している。さらには現地NGOのシェヴコ(ÇEVKO Foundation)がスキームに参画しており、企業の取りまとめや廃棄物回収などを支援している。その技術レベルは、最先端の研究には敵わずとも、現地包材メーカーやNGOなどを巻き込むことで、リサイクル可能な包材が実際に回収されるまでの仕組みを構築した。

(3) 回収・リサイクル

■ローカル主導(ベトナム):ウレンコ(URENCO:ハノイ市都市環境公社)
ベトナムのウレンコは、都市部を中心に家庭ごみの分別から回収、処理、リサイクルまでを担う組織である。ユニリーバはウレンコと連携を図ることで、プラスチック包材の回収・リサイクル推進活動を開始した。多くのグローバルメーカーはリサイクル可能な包材開発を先行する一方、ローカルにおける包材回収の仕組みを構築することに時間を要するため、目標通りにリサイクル率が改善されない事例が散見される。そのような中で、ユニリーバはベトナムにおいて、ごみの回収・リサイクルを公共的に実施しているウレンコのインフラを活用し、リサイクル率向上に直結するスキームの構築に成功している。

【図表2】各プロセスにおける領域別のメリット

プロセス グローバル主導のメリット ローカル主導のメリット
(1)啓蒙活動 各国・地域に対して横断的に情報発信が可能 ローカルネットワークを通して現地住民の環境意識を変えるための活動が可能
(2)包材の研究開発 さまざまな分野において最先端の研究・開発が可能 現地包材メーカーやNGOなどを巻き込み、回収されるまでの仕組みの構築が可能
(3)廃棄物の回収 国・地域ごとにおけるローカルの廃棄物処理業者やリサイクル業者との連携により、既存の回収・リサイクルインフラの活用が可能
(4)リサイクル

(出所)各種資料をもとに当社作成

4. サステナブル目標達成に向けた企業間連携の重要性

上述してきたように、先進的なグローバルメーカーは、目的と各国の実情に応じた企業間連携を進めている。世界中に啓蒙活動を広めるという目的においては、エレン・マッカーサー財団といったグローバル団体のネットワークを活用し、各国横断的に推進することで取り組みが加速する。一方で、途上国を中心に廃棄物の回収・リサイクルインフラ自体が整備されていない国においては、ローカルの企業や団体、そして住民を巻き込み、実際にリサイクルがなされるまでの仕組みを構築することが求められる。

今後、各企業は、グローバルとローカルにおいて、2つの視点をバランス良く持ち続けることが重要となる。自社単独の取り組みには限界があるため、両睨みを利かせながら、他の企業や団体とのアライアンスを上手く活用することが、サステナブル目標達成への足掛かりになるといえるだろう。

参考文献

エレン・マッカーサー財団公式サイト(2021年9月22日確認)

ザ プラスチック フラミンゴ公式サイト(2021年9月22日確認)

Unilever公式サイト(2021年9月22日確認)

フラウンホーファー研究機構(日本代表部)公式サイト(2021年9月22日確認)

pnTurkey(トルコのプラスチック関連記事サイト)(2021年9月22日確認)

URENCO公式サイト(2021年9月22日確認)

【専門用語集】

掲載回 専門用語 意味
2.3.4 SDGs 持続可能な開発目標を指す。
4 サステナブル活動 「環境・社会・経済の観点から世の中を持続可能にしていく」という考え方の下に取り組む活動のこと。
4 多層包材 プラスチックの多層フィルムを使用した包材のこと。

 

【関連レポートはこちらから】

・シリーズ「食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ」①
転換点を迎えたビジネスデザイン (2021年11月11日)

・シリーズ「食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ」②
途上国の出口戦略~カスケードリサイクルの可能性(2021年11月15日)

・シリーズ「食品産業のプラスチック包材にみるサステナビリティ」③
途上国の廃棄物回収~ウェイストピッカーと企業動向(2021年11月24日)

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