政策・経営研究39号最終
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国際貿易・投資ルールの将来9を中心とする国際貿易体制の強化は進んでいる。しかしながら、貿易自由化や新たなルールの策定の進捗には限界がある。WTO設立後初めての包括的な交渉であるドーハ・ラウンドは、2001年11月に立ち上げられて以来、決裂と交渉再開を繰り返し、貿易円滑化等において部分的な合意を見たに過ぎない。WTO交渉における意思決定は全会一致が基本となるが、ウルグアイ・ラウンド交渉当時123ヵ国であった交渉参加国・地域の数が現在は162ヵ国・地域に増え、新興国を含む多様な経済・社会情勢の国々が交渉を通じて利害調整を行う際の困難は大きく、妥結の見通しがないまま今日に至っている。(2)WTOと地域経済協定(FTA/EPA、関税同盟)の関係GATT/WTOの規律の中心となる原則は無差別原則である。無差別原則は、加盟国が他の加盟国と第三の加盟国を差別しない(すなわち等しく最もよい待遇を与える)「最恵国待遇」と、加盟国の領域内で自国産品や内国民と他の加盟国の産品や他国民を差別しない(すなわち他の加盟国民にも内国民と同じ待遇を与える)「内国民待遇」の2つの原則から成る。しかし、GATTの時代から特定の加盟国の間に限って貿易の自由化を進める地域貿易協定は、内国民待遇の原則の例外として認められてきた。その際の条件として、地域貿易協定の中の実質的にすべての貿易を自由化すること(すなわち、選択的に一部の分野の関税等を残存させないこと)、地域貿易協定の外の国に対する障壁を高めないこともGATTに規定されている(GATT第24条)。「実質的にすべての貿易の自由化」という要件は、「実質図表1 多数国間および二国間・地域の世界貿易ルールの動き多数国間の動き二国間・地域の動き1946年GATT発効。最恵国待遇を原則とするが、その例外として地域貿易協定を認める。1947年GATTジュネーブ交渉1949年GATTアヌシー交渉1960~70年代FTAや関税同盟は欧州において発展(EU、EFTA等)1973~79年東京ラウンド交渉1986~94年ウルグアイ・ラウンド交渉1992年ASEAN自由貿易協定発効1994年北米自由貿易協定発効1995年WTO協定発効1995年EU拡大の始まり1997年基本電気通信サービス、金融サービスなど分野別交渉1990年代半~FTAが世界で急速に拡大。地理的に遠い国同士、経済発展段階が異なる国同士のFTAの締結多数。2000年東アジアは「FTA真空地帯」(世界でFTAを持たないのは日、韓、中、台湾、香港の5ヵ国・地域のみ)2001年ドーハ・ラウンド開始2001年米ヨルダンFTA等発効2003年日シンガポールEPA発効2004年韓チリFTA、米シンガポールFTA等発効2005年ドーハ・ラウンド交渉期限延期2005年日メキシコEPA発効2010年ASEANが「ASEAN+1」構築2012年米韓FTA発効2013年第9回WTO閣僚会議貿易円滑化など合意2015年第10回WTO閣僚会議で交渉継続を合意2015年TPP大筋合意。「メガFTA時代」へ2016年日EU・EPA、米欧FTA交渉中出所:各種資料より筆者作成

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