政策・経営研究39号最終
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環太平洋パートナーシップ(TPP)協定10季刊 政策・経営研究 2016  vol.3的」という一定の留保の余地がありながらも、農業分野も含めたすべての貿易の自由化を迫るものであり、日本にとって国内的な調整の必要をともなう根拠となってきた。日本にとって最初のEPA相手国が農産品輸出がほとんどないシンガポールであったのもこのためである。GATT発効以来WTOに襷たすきを渡すまで、多数国間の貿易ルールは順調に発展してきたが、近年、地域貿易協定の影響が急速に高まっている(「図表1 多数国間および二国間・地域の世界貿易ルールの動き」参照)。(3)WTOを先取りするFTA/EPA多くのFTA/EPAは、WTOにすでに規定が存在する関税削減・撤廃、サービス貿易の障壁緩和・撤廃、原産地規則やセーフガード等の貿易ルール、知的財産のルール、紛争解決等を含む。FTA/EPAの方がWTOに比して低い関税率やより開放されたサービス貿易市場、より緻密で厳格な貿易ルールや新たな規律分野を有する内容となっており、このようなWTOより発展した部分を「WTOプラス」という。WTOプラスが大きいFTAほどレベルが高いものと評価され、TPPについては最もレベルが高いFTAのひとつであるといえる(「図表2 WTO、一般のFTA/EPAおよびTPP協定」参照)。新たな規律分野として、投資、競争政策、政府調達、電子商取引、環境、労働等のルールを持つFTA/EPAも多い。WTOのドーハ・ラウンドにおいて新たな規律策定の対象となったものの、まだ合意に至っていないのが、投資、競争、貿易円滑化、政府調達の透明性、電子商取引、環境等であり、大所帯のWTOで合意を得るのに時間がかかっている間に、FTA/EPAがその内容を先取りしているかたちである。WTO加盟国は自国が地域貿易協定に参加する際にはWTOに通報する義務を負うが、これまでWTOには400以上の地域貿易協定が通報され、現在も280程度の地域貿易協定が発効中である1。(4)国際投資の規律国境を越える直接投資に関するルールは、GATT/WTOの枠外で進展してきた。戦後まもなく1950年代から、自国の投資家や投資財産を、収用や国有化等から保護するために二国間投資協定(BIT)を締結する国が出始めた。ただし、1969年には世界で72件、1979年には165件と、締結国は限られていた。その後、1980年代以降、世界の海外直接投資は拡大し、投資後の財産の保護や新たな投資の自由化の重要性が高まり、1989年には385件であったBITは、1999年には1,857件へと飛躍的な増加を遂げた。二国間および複数国間の国際投資協定(IIA)は、2014年末には2,926件となったが、投資に関する規律がFTA/EPAの中のひとつの「章」として組み込まれている場合も多く、それを加えると2014年末で3,271件のIIAが存在し、世界を網の目のように覆っている。日本も書名や合意が済み、発効待ちの協定を含み、40以上のIIAを有している。図表2 WTO、一般のFTA/EPAおよびTPP協定出所:各種資料より筆者作成

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