政策・経営研究39号最終
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国際貿易・投資ルールの将来11他方、WTOにおいては未だ包括的な投資に関する規律はなく、貿易関連投資措置協定(TRIMs協定)において、投資受入国が自国産業保護の観点から外国からの投資を受け入れる条件として、国産品の購入や使用を要求すること(ローカルコンテンツ要求)を禁止する等、限定的な規定を設けているに過ぎない。ドーハ・ラウンドにおいて投資分野は、競争や政府調達の透明性と並び、準備交渉を開始する対象とされたものの、2003年には交渉開始が先送りされ、WTOでの規律策定は期待できない状況となった。国際貿易・投資ルールは、ここ10年ほどのデジタル経済の急速な進展を前提とせずに構築されてきたため、当然ながらデジタル経済に対応しきれていない。(1)WTOにおけるデジタル経済関連の動きWTOの枠組みにおけるデジタル経済に関連する進捗が皆無なわけではない。まず、1995年、WTO協定の一部としてサービス貿易に関する一般協定(GATS)が発効し、インターネットを介したサービス提供が自由化の対象として包含された。同じGATSの枠組みで、デジタル経済を支える通信インフラに関わる基本電気通信サービスに関する合意が成立している。また、IT関連の製品(ハード)に関する貿易自由化については、29加盟国・地域が合意した情報技術関連産品(コンピュータ、計算機、電話、ファクシミリ、記憶媒体ディスク、ディスプレー等144品目(HS6桁ベース))の関税撤廃に関し、1996年の第1回WTO閣僚会議(於シンガポール)で宣言され、その後、中国、インド、ロシア等が加わり82加盟国・地域が参加している。さらに2015年12月の第10回WTO閣僚会議(於ケニア)で、対象品目を拡大する交渉が妥結し、201品目について53ヵ国・地域が関税を撤廃することとなった。電子商取引に関しては、WTOにおいて、米国の提案を受け、1998年の第2回閣僚会議において「グローバルな電子商取引に関する閣僚宣言」が採択され、電子的送信物に関税を賦課しないという原則(モラトリアム原則)および電子商取引に関する貿易問題を包括的に検討するための作業計画を策定することが合意された。WTOでの検討は、WTO協定のなかにすでに存在していたサービス、物品、知的財産、開発それぞれの観点からなされ、既存枠組みを超えた横断的な視点の重要性は認識されながらも、WTO全体としての議論の収束はみられてないのが現状である2。(2)FTA/EPAにおけるデジタル経済に関連する動きWTOで決着を見ていない電子商取引に関し、日本のEPAを含む複数のFTA/EPAが先取りして規定を設け、電子的サービス提供は、電子的手段であっても他の手段であっても等しくサービス貿易規律の適用を受けるべきであるとの技術中立性、デジタル・プロダクトの無差別待遇、関税モラトリアム、コンピュータ関連設備の所在地に関する要求の禁止等について規定している。そのなかでも進んだ内容を持つTPPの電子商取引章は、デジタル・プロダクトの無差別待遇や国境を超える情報移転の自由の確保するとともに、サーバ等のコンピュータ関連設備の現地化要求の禁止等、電子商取引を阻害するような過剰な規制が導入されないよう各種規律を規定している。また、電子商取引利用者の個人情報の保護、オンライン消費者の保護に関する規律を定める等、消費者が電子商取引を安心して利用できる環境の整備についても規定している。デジタル・プロダクトについては、「デジタル式に符号化され、商業的又は流通のために生産され、及び電子的に送信されるコンピュータ・プログラム等」と説明されている3。TPPの電子商取引章ではまた、これまで日本のEPA等には規定が見られなかった「国内の電子的な取引の枠組み」についても規定があり(TPP協定第14.5条)、UNCTRAL電子商取引モデル法(1996年)と「国際契約における電子的な通信の利用に関する国連条約(e-CC)」(2005年)に整合する国内法の維持を締約国に義務付けている(TPP協定第14.5条第1項)。また、努力規定ながらも、(a)電子的な取引に対する不必要な規制の負担を回避すること、(b)電子的な3国際貿易・投資ルールにおけるデジタル経済

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