政策・経営研究39号最終
14/99

環太平洋パートナーシップ(TPP)協定12季刊 政策・経営研究 2016  vol.3取引のための自国の法的枠組みの策定において利害関係者による寄与を容易にすることを各締約国に求めており(同第2項)、関連する国内法の整備について他国の利害関係者の意見提出を認めていくという一定の方向性を示すものとなっている。さらに、「情報の電子的手段による国境を越える移転」については、各国は自国の規制上の要件を課し得ることは認めながらも(TPP協定第14.11条第1項)、事業の実施のために行われる場合には、情報(個人情報を含む)の電子的手段による国境を越える移転を許可すること(同第2項)、各国が政策上、正当な目的を達成するためには情報の移転を制限してよいが、貿易に対する偽装した制限とならないよう、また、目的達成のために必要である以上の制限を課さないよう義務付けている(同第3項)。この規定により、デジタル・プラットフォーマー等の国際的な事業者が、国境を越えた情報の移転を図る際、不必要な制限を受けないこととなる。以上の通り、貿易投資枠組みにおいては、先進的なFTAにおいてデジタル経済に関わる必要な規律の一部のみがカバーされ、プライバシーや安全性(サイバーセキュリティ)といった問題は、国内規制に委ねられている状況である。こうした国内規制について、日本を含む各国がそれぞれ整備に向けて検討を行っている4。(1)E15イニシアティブとはE15イニシアティブとは2011年に「貿易と持続的発展のための国際センター(ICTSD)」と、ダボス会議の主催で知られる「世界経済フォーラム(WEF)」の共催により設立された有識者会議であり、グローバルな貿易投資秩序の強化に向け、政府や産業界、市民社会に資する戦略的な分析や提言活動を行うべく、世界的な専門家や研究機関の英知を結集させることを目的としている5。今日、数多くのFTA・EPAやIIAが出現し、TPP等のメガFTAが新たな国際経済秩序の先鞭を切るなか、ここ10年のドーハ・ラウンドの停滞は、多数国間の貿易秩序を提供してきたWTOが新たな問題に対応する能力が減退していることを示しているという危機感の高まりがE15イニシアティブ設立の背景にある。E15イニシアティブでは、独立した立場で参加する375名の有識者が全18の作業部会において検討を行い、提言活動を行っている(「図表3 E15イニシアティブの作業部会のテーマ」参照)。検討対象となるのは、これまでの貿易投資体制下では設定されていなかった複数分野に関わるテーマや、WTOやFTA/EPAにおいて規律や交渉の場があるものの、実態の変化を受けて異なる視座での議論の必要性が高まっているテーマ、さらには貿易投資体制そのものに関わるテーマ等である。E15イニシアティブは2016年1月のダボス会議においてテーマごとに多くの提言を公表し、つづく2016年から17年にかけては、提言に基づき政策決定者やその他の関係者との対話を深めていくこととしている。(2)デジタル・エコノミーに関する提言E15イニシアティブのデジタル経済作業部会は、コロンビア大学国際公共学部長のメリット・ジャノー教授のリーダーシップの下、ICTSDコミュニケーション・戦略担当専務理事のアンドリュー・クロスビー氏が議長を、ブルッキングス研究所シニア・フェローのジョシュア・ポール・メルツァー氏が共同議長を務め、約20名の欧米アジアの専門家が参加のうえ、提言書「国際貿易におけるインターネットの機会最大化6」をとりまとめた。同提言では、まず、デジタル取引(digital trade)とは何かを確認し、続いて、デジタル取引とデータフローのインターネットの拡大について現状を分析し、そのうえで、デジタル経済において貿易を最大化するための政策の選択肢を示している。提言が示す主な点は以下の通りである。 「国際貿易におけるインターネットの機会最大化(2016年1月公表)」(抄訳)1.デジタル取引とは何かここ10年のデジタル経済の進展により、越境取引や投資において新たな機会が創造され、大小さまざまな4E15イニシアティブにおけるデジタル経済に関する貿易投資ルールへの提言

元のページ 

page 14

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です