政策・経営研究39号最終
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環太平洋パートナーシップ(TPP)協定14季刊 政策・経営研究 2016  vol.3ものとし、さらに、デジタル取引を可能にするインターネットアクセスおよびデータの越境移動も対象とする。2.デジタル貿易とデータフローの拡大①インターネットの拡大と貿易への影響デジタル取引の推進力のひとつはインターネットアクセスの拡大である。2015年末までに、320億人がオンラインにアクセスするようになり、うち20億人は途上国からのアクセスとなる。しかしながら、40億人はオンラインのアクセスは得られず、その90%は途上国の人々である。また、モバイルからのインターネットアクセスが急速に拡大していることも特徴である。国際貿易、経済成長および雇用に対しても、インターネットは影響を与えている。インターネットへのアクセスと越境データ取引が国際貿易に影響を与える例として、facebookやAirbnb、Alibabaといったグローバル企業の出現により、国境を越えて顧客データが集められ、移送されるようになっていること、こうしたビッグデータがイノベーションや生産性向上、経済競争力の源泉となっていること等が指摘される。さらに、新たに出現しているIoTは膨大なデータが集約される源泉となっている。この他、B2Bの拡大、事業者による国境を越えた消費者へのアクセス、中小企業にとっての機会の拡大、途上国の機会の拡大等が指摘される。②インターネットが貿易に与える影響インターネットの拡大は、サービス貿易の重要性を高めることとなる。たとえば、インターネットを介して専門職業サービスを国境を越えて提供できるようになる等、サービスの取引が広がる。また、ハードで取引されていたソフトウェアがオンラインで取引される等、製品とサービスの境界線が曖昧になる傾向もある。こうした場合、WTOにおいて物品貿易の規律を提供するGATTよりサービス貿易のルールであるGATSの方が自由化の度合いが低いことが問題となる可能性がある。また、インターネットに進展により、デジタル化がサービスにより製品の付加価値を高めている。たとえば、キャタピラーのトラックは、リアルタイムのロード情報の活用により燃費を最小化するといった機能を兼ね備えるようになっている。インターネットは、消費者保護の多様化、金融の安定、健康や安全性といった国内規制分野にも影響を与えている。デジタル取引が重大な影響を与える規制分野としてプライバシー分野が挙げられる。各国のプライバシー規制の相違を管理する方法がないため、輸出国にとっては個人情報保護を強力な規制の対象とするインセンティブが働いている。欧州プライバシー指令における、「適切な」レベルの保護がなされない国への個人情報の送信の禁止はこの一例である。デジタル貿易に対して市場を開放することは、国内または域内のプライバシー保護法に対する影響に関連する。規制に対する外部からの影響に対応する方策を講じなければ、政府はより厳しい規制を設けるインセンティブを持つことになる。デジタル取引と知的財産ルールのバランスも重要であるが、TPPにおいては、知的財産権の保護や行使は、技術革新の促進や技術移転や普及に資するよう、権利と義務との間の均衡(バランス)に資するべきとの規定が設けられており、前進であると評価できる。③インターネットアクセスの増加、デジタル取引のための環境整備デジタル取引拡大に向けての環境整備を検討する際、念頭に置くべき規制は3類型ある。第1は、事業者や消費者にとって信頼性を高める規制や組織を構築することであり、これには紛争処理機能、決済システム、消費者保護法、個人情報保護等も含まれる。第2は、オンラインで入手できる情報や国境を越えるデータの移動を制限する保護主義的な規制である。サーバ等のコンピュータ関連設備の現地化要求(データ・ローカライゼーション)や国内産業保護のためのインターネットコンテンツのアクセスの制限等は、抑制または禁止する必要がある。第3は、デジタル取引の阻害要因とな

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