政策・経営研究39号最終
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環太平洋パートナーシップ(TPP)協定18季刊 政策・経営研究 2016  vol.3(1)停滞するWTOでの貿易自由化世界経済は、第2次世界大戦後、貿易自由化を進める中で成長を遂げてきた。世界全体での貿易自由化を推進するものとして、かつてはGATT(General Agreement on Tariffs and Trade、関税及び貿易に関する一般協定)、現在は、その機能を引き継ぐ形で1995年に設立されたWTO(World Trade Organization、世界貿易機関)がある。WTOでは現在、2001年に立ち上げが決定されたドーハ・ラウンドの交渉が行われている。貿易円滑化等合意が得られた分野は、2013年にバリ・パッケージとしてまとめられた。しかしながら、関税の引き下げ等、他の交渉分野においては、先進国と途上国の対立等から、全体としては未だに合意に至っていない。こうした中、2015年末に開催されたWTO閣僚会合では、今後の交渉の進め方について先進国と途上国で意見が分かれた。先進国は、長期間にわたる交渉にもかかわらず成果が出ていないことから、今後も交渉を進める意義を疑問視している。他方、貿易自由化を自らの経済発展につなげたい途上国は交渉の継続を希望した。ドーハ・ラウンドの先行きはいっそう不透明感が高まっていると言える1。(2)世界で増加するFTAWTOでは、すべての加盟国に対して関税等において同等の待遇を与える最恵国待遇を基本原則とする。このため、特定の国との間でのみ関税を撤廃するFTA(Free Trade Agreement、自由貿易協定)、FTAと比べると幅広い分野をカバーするとされるEPA(Economic Partnership Agreement、経済連携協定)は、WTOでは例外的なものと位置付けられており、より高い水準での貿易自由化が求められている2。FTAを締結して関税が撤廃された場合、輸出先で関税がかからないため、FTAを締結していない国よりも価格面で有利になり、輸出の増加が期待できる。これがFTA締結のメリットのひとつであり、各国はFTAの締結により、貿易・投資の自由化を推進して、生産性を向上させ、経済成長へとつなげようとしている。特に、新興国の中には、海外からの直接投資を呼び込んで、輸出拠点となることを目指し、FTAの締結に積極的な国もある。また、経済規模の小さな国は、内需中心の経済成長には限界があることから、外需の取り込みが重要となる。こうした観点から、FTAの締結に積極的な国もある。また、FTAは、締結相手国を自ら選定することができ、交渉に参加する国がそれほど多くないこと等から、交渉が比較的スムーズに進むという特徴がある。FTAは、締結によるメリットが強調される傾向にあるが、締結しないことによるデメリットもある。輸出競合国がFTAの締結を進める中で、自国がFTAを締結しないでいると、輸出を行う点で相対的に不利な状況に陥ることになるからである。そうした状況を回避するために、輸出競合国がFTAを締結している国と、FTAを新たに締結しようとする国も出てくる3。こうしたことから、世界全体での貿易自由化の進展が停滞する中、二国間あるいは複数国間におけるFTAは世界において増加している(図表1)。FTAは、古くはEEC(European Economic Comm unity、ヨーロッパ経済共同体)、1994年に発効したNAFTA(North American Free Trade Agreement、北米自由貿易協定)等があるが、アジアにおいては2000年代に入ってから締結が活発化した。アジア太平洋地域におけるFTAの締結状況をみると、ASEAN全体では、中国、韓国、日本、インド、オーストラリア・ニュージーランドと個別にFTAを締結しており、アジアの自由貿易圏におけるハブのような存在となっている。韓国は、米国、EU、ASEANといった経済規模の大きな国・地域とFTAを締結しているほか、中国とのFTAを2015年末に発効させた。この結果、韓国のFTAカバー率(FTA締結国との貿易額が貿易総額に占める割合)は6割を超えており、日本や台湾等を除く主な貿易相手国とFTAを締結していると言える。中国は、ASEAN、韓国のほか、台湾、香港、オーストラリア、ニュージーランド、1世界におけるFTAの潮流

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