政策・経営研究39号最終
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環太平洋パートナーシップ(TPP)協定22季刊 政策・経営研究 2016  vol.3たりGDPの水準に注目すると、オーストラリア、米国、日本等先進国の水準は3万ドル以上と高い一方、ベトナムは2千ドル程度である。このように、TPP参加国には経済規模、経済発展段階等の点から、多様な国が参加していることが分かる。また、ベトナムは市場経済システムを導入しているとはいえ、社会主義国であり、国営企業の存在感が大きいといった特徴がある5。なお、もともと4ヵ国でスタートしたTPPが現時点で参加国が12ヵ国に拡大しているように、TPPは「開かれた」自由貿易協定といった特徴をもっている。TPPが大筋合意に至った時点で、韓国、インドネシアをはじめとするアジアの国が参加への関心を示している。こうした動きを受けて、TPP参加国は、新たに参加を希望する国に対する審査基準について、検討を進める方向であり、今後、TPP参加国は増加する可能性が高い。(3)TPP交渉分野TPPの交渉分野は、関税、サービス貿易、投資にとどまらず、政府調達、知的財産といった分野のほか、日本がこれまでに締結したEPAでとりあげたことのない「労働」、「環境」も含まれる等、多岐にわたる(図表5)。以下、協定の章立てに基づいて交渉分野について簡単に見ていくことにする。「物品市場アクセス」では、関税の引き下げについて定めている。「原産地規則及び原産地手続」では、関税引き下げの対象となる原産品とみなされるための基準等が定められている。「税関当局及び貿易円滑化」では、税関手続きの効率化を図ることとされている。非関税障壁となりかねない「衛生植物検疫措置」、「貿易の技術的障害」では、透明性の確保等が定められている。サービス貿易や投資に関しては、国内企業と海外企業を平等に扱うという内国民待遇を原則とし、規制を緩和する一方、各国が例外とする分野を設けている。「ビジネス関係者の一時的な入国」においては、ビザの発給に関して透明性を高めることとされている。「電子商取引」では、電子商取引に関するルールが定められている。「政府調達」、「競争政策」、「国有企業及び指定独占企業」は、政府部門に関するルールについてである。「政府調達」では、政府関係機関が公共事業等を発注する際に海外の企業が入札に参入できる基準額等を定めている。「競争政策」は競争法令の制定等について、「国有企業及び指定独占企業」では、国有企業と民間企業の対等な競争条件を確保するための規律がそれぞれ定められている。知的財産では、WTOのTRIPS協定(Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)をベースとしつつ、権利の保護を強化する形となっている。「労働」、「環境」では、貿易や投資において有利となるように基準を緩和することを禁止すること等が定められている。このほか、貿易・投資の自由化によるメリットを大企業だけでなく中小企業も享受できるように、情報提供等を行うことが「中小企業」で規定されている。また、協定の解釈の不一致等を原因とする紛争を解決するためのルール等も定められている。(1)関税分野の合意の概要TPP参加国の自由化率(関税が最終的に撤廃される品目の割合)は、日本は95%、日本以外の国では99%あるいは100%となっている(図表6)。工業製品については、最終的にはすべての参加国でほとんどの品目で関税が撤廃されることになっており、このうち発効時に関税がゼロである品目は、新興国では7~8割程度、他の国では9割以上となっている。もっとも、米国では、自動車の関税(2.5%)は25年目に、トラックの関税(25%)は30年目に撤廃されることになっており、長期にわたって関税が維持されるものもある。日本がこれまでに締結したEPAにおける自由化率(10年以内に関税を撤廃する品目の割合)は最も高いケースでも90%程度であったので、TPPでの自由化率は日本にとっては、高いものであると言える。それでも、日本の自由化率が他の参加国と比較して低3TPPの大筋合意の概要

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