政策・経営研究39号最終
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TPPの概要と日本経済への影響25は、すべての参加国で関税が撤廃される。非農林水産物では、陶磁器、タオル等で関税が撤廃される。品目によっては、日本がEPAをすでに締結している国において、関税の撤廃時期が前倒しされるものもある。このように、TPP参加国間で関税の削減・撤廃が行われるものの、TPPが発効した場合に、日本からTPP参加国向けに輸出するすべての品目が、輸出先での関税の削減・撤廃の対象となるわけではない。一般にFTAにおいて関税の削減・撤廃の対象となるためには、各FTAにおいて原産地規則で定められている基準を満たす必要がある。その基準には、関税分類変更基準や付加価値基準があり、付加価値基準では、輸出品における自国の付加価値の割合が一定以上であることが求められる。TPPでは、付加価値基準について、完全累積制度が採用されており、たとえば、日本から部品を輸入して、マレーシアで加工・組立を行い、他のTPP参加国に輸出する場合、日本とマレーシアの付加価値割合を合計できるようになっている。TPP参加国の付加価値割合を足し合わせることで、原産地基準を満たしやすい形となっている。また、原産地品であることを証明する場合、日本の商工会議所等が証明する「第三者証明制度」や輸出を行う企業自らが証明する「自己証明制度」があるが、TPPでは「自己証明制度」が採用される。自己証明制度は、第三者証明制度と比較すると、手続きにかかる時間が短いといったメリットがあるとされている。このほか、TPPでは、税関において通関手続の迅速化等が図られることになっており、急送便の場合には貨物の到着後、6時間以内に引き取りが可能となる。(2)非関税分野の合意の概要サービス、投資については、内国民待遇や最恵国待遇が原則として適用されることになっており、参加各国はこうしたルールの適用の例外とする分野をリスト化する形となっている(ネガティブリスト方式)。この方式では、規制の内容が明確になることから、WTOにおける、各国が自由化するサービス分野をリスト化するポジティブリスト方式と比較すると、透明性や予見可能性が高いとされている。サービス分野では、数量制限の禁止のほか、内国民待遇等の例外とされた分野においてはラチェット条項が置かれており、自由化の程度が後退しないような仕組みとなっている。また、サービス業への参入にあたり、進出先国において拠点の設立を要求することが禁止されている。TPPでの合意を受けて、海外企業に対する参入規制が緩和されることになるものの、ネガティブリスト方式が採用されているように、すべての分野で規制が緩和・撤廃されたり、拠点設置要求が禁止されたりするわけではない。日本は、社会事業サービス(保健、社会保障、社会保険等)、初等および中等教育、エネルギー産業、放送業、土地取引等については引き続き、規制を維持するとともに、ラチェット条項の対象外としている。また、弁護士、会計士等については、各国が定める要件を満たす必要があり、資格をTPP参加国間で相互認証することにはなっていない。つまり、TPP参加国の外国人が日本で弁護士業を行う場合、日本の弁護士の資格を保有していることに加えて、事務所を日本に開く必要があることになる。投資分野では、進出先の政府による代償をともなわない不当な収用措置に対して、企業は進出先の政府を、国際仲裁機関に訴えることができるISDS(Investor-State dispute settlement)条項が盛り込まれている。ISDS条項はTPPに特有のものではないが、ISDS条項が盛り込まれたことにより、投資家にとってはリスクが軽減することになる。ISDS条項に関して、TPPでは、企業による濫訴を防ぐため、申立て期間を一定の期間(3年6ヵ月)に制限する規定等が置かれている。このほか、進出先の政府による措置が、公共の福祉といった正当な目的を有しており、差別的でない場合には、基本的にはISDSの対象外とされている。政府調達分野では、TPP参加国のうち、WTOの政府調達協定(GPA、Agreement on Government Procurement)において海外の企業に市場を開放して

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