政策・経営研究39号最終
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環太平洋パートナーシップ(TPP)協定26季刊 政策・経営研究 2016  vol.3いる国は日本、シンガポール、米国等にとどまっている。TPPの合意内容に基づき、GPAに参加していないベトナム、マレーシア等でも新たに政府調達市場が開放されることになる。国有企業および指定独占企業分野では、商業活動を行っている国有企業等に対して、海外の企業との競争において、有利となるような優遇措置を与えてはいけないといった規律が定められている。国有企業に対する規律は、WTO協定において定められていないことから、TPPにより、TPP参加国の企業は他の参加国の国有企業と対等な競争条件を確保できることになる。ただし、TPP参加各国は、特定の規律について、特定の国有企業等に対して適用の例外とすることを定めている。ビジネス関係者の一時的な入国では、ビザの手続きの迅速化・透明性の向上が図られることになる。ここでいうビジネス関係者とは、企業に勤務する人、投資家、研究所およびその家族等であり、単純労働者等は対象外となっている。また、国によっては、滞在期間が延長されるといったケースがあり、たとえば、ベトナムに入国する短期の商用訪問者(サービス販売の交渉目的)は、滞在期間がこれまでの90日から6ヵ月になる。知的財産分野では、WTOの取り決めよりも知的財産の保護が強化される形となっていると言える。著作権の保護期間について、TPP参加国では少なくとも作者の死後70年とされることになっている。日本では映画は現時点で公表後70年(その著作物が創作後70年以内に公表されなかったときは、その70年)であるが、書籍等は原則として著作者の死後50年であり、TPPにより20年延長されることになる。これにより、著作者の権利が強化されることになる一方、著作権の保護期間が終了した作品をこれまでビジネスに活用していた場合には制約を受けることになる。また、著作権の侵害にともなう損害賠償金額について、法定損害賠償額が導入されることになるほか、著作権侵害に対して、著作権者以外の人が裁判を起こすことができるようになる(非親告罪)。もっとも、非親告罪化により、パロディ等の二次創作が委縮してしまう懸念があることから、日本では、その対象は、著作権侵害による被害額が大きな額である場合等に限る方向のようである。このほか、TPPでは、商標に関する国際約束である「マドリッド議定書」または「商標法シンガポール条約」の締結が義務化される。TPP参加国の中にはカナダ、マレーシアのようにどちらも締結していない国があり、これらの国が商標に関する国際約束を締結することにより、日本の企業は当該国において商標登録が行いやすくなる。農林水産物等の地理的表示(GI、Geographical Indication)については、相互に保護したり、認定したりするための手続きが定められ、海外においてもブランドが保護されやすくなる。(1)経済全体への影響TPPは、さまざまなルートを通じて日本経済に影響を与えるが、関税の削減・撤廃といった貿易面を通じた影響について考えてみる。輸出面では、他のTPP参加国の関税の削減・撤廃により、日本の輸出環境は改善すると考えられる。もっとも、日本の主要輸出品である機械類や自動車の関税率は、TPP参加国の一部の新興国を除くと、すでに数%と低い水準となっている。さらには、日本の製造業では自動車をはじめとして、海外現地生産が進展している。このため、他のTPP参加国の関税が削減・撤廃されても、全体としては日本の輸出が大きく増加するとは考えにくい。ただし、品目によっては日本からの輸出が増えるものもあると考えられる。たとえば、輸出全体に対する規模は小さいものの、農林水産物やタオル等は、関税引き下げが輸出増加のきっかけとなる可能性がある。輸入については、日本はすでに工業製品の関税率は低く、TPPでは農林水産物を中心に関税の削減・撤廃が行われる。日本が重要5品目と位置付けているものの中では、米や小麦は国別に輸入枠が設定されることになっており、ニーズに応じて輸入が増加する可能性がある。牛4TPPが日本経済に与える影響

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