政策・経営研究39号最終
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TPPの概要と日本経済への影響27肉は関税が引き下げられることになっており、輸入が増加することも考えられる。もっとも、牛肉は、関税の削減にあたり、輸入の急増に備えたセーフガードが設けられている。これにより、輸入が急増した場合に、関税率を一定水準に引き上げることができるようになっている。また、牛肉の関税は発効時には38.5%から27.5%に引き下げられるものの、その後の引き下げ幅は小幅なものとなっている(関税率は10年目で20%、16年目以降は9%)。こうしたことから、輸入は長期的に見ると増加する可能性はあるものの、輸入数量が短期間のうちに急速に増加するとは考えにくい。また、関税が削減されても、為替レートの変動がその効果を打ち消してしまう可能性もあり、たとえば輸入品の購入者価格の下落といった、消費者の目に見える形で効果が現れにくくなることも考えられる。以上から、輸出、輸入については、貿易自由化を通じて、いずれも増加する可能性はあるものの、大きく増加することにはならないだろう。輸出と輸入が増加する結果、GDPはどのような影響を受けるのだろうか。政府は、TPPの合意に基づき、関税が削減・撤廃されるとともに、税関手続きの効率化が進んだ場合に、日本のGDPがどの程度押し上げられるかを試算している。それによると、TPPは日本の実質GDPを最終的に2.59%押し上げ、雇用者を80万人近く増加させるとされている(図表8)。もっとも、この試算は、TPPをきっかけに、経済の「好循環」が働くことを想定していることに注意が必要である。つまり、TPPにより、貿易自由化、税関手続き等の効率化が進んで、生産性が上昇し、それにともなって実質賃金が上昇する。そして、実質賃金の上昇が雇用の増加をもたらし、家計所得の増加につながる。これが最終的に個人消費を押し上げるというメカニズムが働くとされている。したがって、政府が想定するような「好循環」が生じない場合にはTPPがもたらす効果は期待したほどには大きくならない可能性もある8。TPPの合意内容に基づいて関税の削減・撤廃を行うと、日本の実質GDPは長期的には増加する一方、関税収入は減少することになる。日本の関税収入は2014年度で約1兆円であり、このうち3,190億円がTPP参加国からの輸入にかかるものである。政府試算によると、TPPにより関税収入は最終的に2,070億円減少する見込みである。国の一般会計の税収は、2014年度で約54兆円であり、TPP参加国からの輸入にかかる関税収入の減少額は税収全体の0.4%程度にすぎない。したがって、TPPに基づいて関税の削減・撤廃を行っても税収に与える影響は小さいと考えられる。図表8 TPPが日本の実質GDPに与える影響(政府試算)出所:内閣官房TPP政府対策本部「TPP協定の経済効果分析について(概要)」出所:内閣官房TPP政府対策本部「TPP協定の経済効果分析について(概要)」   (平成27年12月)より作成   (平成27年12月)より作成

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