政策・経営研究39号最終
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TPPの概要と日本経済への影響29るTPP参加国のシェアの合計は3割近くを占めている。これらの国の関税の削減・撤廃をはじめとする市場開放は、日本の農林水産物の輸出のさらなる増加のきっかけとなると考えられる。ただし、関税が削減・撤廃されたとしても、相手国・品目によっては検疫の関係で日本から輸出できないケースがある。関税の削減・撤廃の効果を輸出の増加へとつなげるため、輸出の増加が期待されるものから優先的に検疫に関する交渉を進める必要がある。日本の関税の削減・撤廃は、農業だけでなく、食品製造業等に対しても影響を及ぼす可能性がある。こうした業種では、海外から原材料を安く調達できる可能性がある一方、チョコレート、ビスケットといった菓子類や加工食品等の関税も撤廃されるため、輸入品との競争が激しくなることが考えられる。外食産業等では安価な輸入品の調達という選択肢が広がるメリットが生じるだろう。製造業では、他のTPP参加国の関税の削減・撤廃により、関税支払額の節約という点で恩恵を受ける業種があり、とりわけ自動車製造業ではその効果が大きいと見られる11。日本の自動車製造業では海外現地生産が進んでいるが、現地の子会社が自動車生産にあたって必要となる部品の中には日本から輸入するものもある。こうした部品には、現在、他のTPP参加国では数%の関税がかけられており、それを消費者に転嫁できない場合には、日本企業が結果として負担していることになる。TPPにより自動車部品にかかる輸入関税が撤廃されると、関税負担が軽減されることになる。非製造業では、他のTPP参加国における規制緩和等により、恩恵を受ける可能性がある業種がある。マレーシア、ベトナムでは、コンビニやスーパーといった小売業で規制が緩和され、海外の企業が参入しやすくなる。特にベトナムは人口が9千万人と規模が大きく、人口の年齢構成も若いことから、今後、需要が伸びると考えられ、日本企業にとっては、ビジネスチャンスが拡大することになるだろう。また、マレーシア、ベトナムでは金融業でATMの設置等に関する規制が緩和されるほか、ベトナムでは電気通信業、広告業、マレーシアでは輸送業等で規制が緩和される。政府調達分野での合意により、マレーシア、ベトナム等の一定金額以上の公共工事等の入札に、新たに日本企業が参加できるようになる。また、チリ、ペルーでは入札の参加基準となる金額が引き下げられる。実際に、参入機会がどの程度増えるかは不明であるが、インフラ輸出の増加を目指す建設業にとって、海外における政府調達市場の拡大は好ましいことと言える。なお、日本はすでにGPAにおいて、海外企業に市場開放を行っており、内閣官房編「平成26年度版 政府調達における我が国の施策と実績」(平成27年3月)による図表9 TPPによる農林水産業の生産額への影響(政府試算)品目名生産減少率(%)生産減少額(億円)品目名生産減少率(%)生産減少額(億円)米大麦小麦砂糖牛肉豚肉でん粉原料作物牛乳乳製品加工用トマトかんきつ類りんご鶏肉鶏卵0000000000000046252311~625169~33212198~291121~423~619~3625~53合板等あじさばいわしほたてがいたらいか・干しするめかつお・まぐろ類さけ・ます類0000000002196~126~1124~4827~544~810~1957~11340~81農産物計-878~1516林水産物計-393~566出所:内閣官房TPP政府対策本部「農林水産物の生産額への影響について」(平成27年12月)

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