政策・経営研究39号最終
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TPPの概要と日本経済への影響31影響に対する国民の懸念を払拭するための政策の目標を明らかにするものとされている。具体的には、農林水産分野の施策のほか、TPPの活用の推進に向けて、中堅・中小企業への情報提供や相談体制の整備や、中堅・中小企業等の新市場開拓のための総合的支援体制の強化といった支援策が盛り込まれている。こうした取り組みを、中堅・中小企業のニーズに応える形で効果的に推進していくことができるかどうかが、今後の課題となる。日本は今後、人口が減少することが見込まれており、内需が伸びづらくなる中、海外需要を取り込むことが課題のひとつとなる。TPPは貿易の自由化や海外でのビジネス環境の改善を通じて日本企業にとってビジネスチャンスを拡大させるものであり、海外需要の取り込みに寄与すると考えられる。国内においては、関税の削減・撤廃により輸入品が増加して、競争が激しくなる業種や企業もあるだろうが、そうした競争は、自らの強みを再認識する機会ともなり、それが海外需要の取り込みの強化につながると期待される。TPPが日本経済にとって期待されているような効果をもたらすかどうかは、企業がTPPを活用して企業業績の拡大へとつなげることができるかにかかっていると言える。【注】1ドーハ・ラウンドでの交渉は停滞しているものの、貿易自由化の推進においてWTOがまったく機能していないわけではない。2015年末には米国、EU(28ヵ国)、日本、中国、韓国、台湾などWTOに加盟する53のメンバーが参加して、新たに情報通信機器の関税を2024年1月までに撤廃するITA(Information Technology Agreement、情報技術協定)交渉がまとまっている。2実際に締結されているFTAの中にはEPAと大きな違いがないものもある。本稿では、基本的にはFTAと表記し、個別にEPAと呼ばれているものについて言及する場合にEPAとする。3経済産業省(2006)によると、こうした効果はBaldwinにより「ドミノ効果」とされている。4RCEPには中国が、TPPには米国が参加しているものの、両者には日本、オーストラリア、シンガポール等が参加していることから、必ずしも互いに排除するものではないと考えられる。5このほか、マレーシアは、マレー人を優遇するブミプトラ政策をとっているといった特徴がある。6交渉で用いられたHS2007による。TPPの合意内容は、最終的にはHS2012に基づくものとなっており、HS2012によると、関税を撤廃したことがない品目は901であり、このうち重要5品目は594である。7なお、日本はTPP参加国の中では、ベトナムから衣類や皮革製品を多く輸入しており、日本の衣類の輸入額に占めるベトナムのシェアは1割程度である。日本はベトナムとEPAを締結済であり、ベトナムから輸入する衣類についてはすでに関税が撤廃されている。したがって、ベトナムから輸入する衣類については、TPPによる関税撤廃の影響を基本的には受けないと考えられる。8TPPがGDPを押し上げる効果については、世界銀行も試算を行っており、2030年までに日本の実質GDPは2.7%程度押し上げられるとされている。これは、政府の試算と同程度の結果である。9これまで国際仲裁機関に訴えられたケースでは、産業別では資源関連が多く、訴えられた国は新興国が多いといった傾向が見られる。10試算の対象は、関税率10%かつ国内生産額が10億円以上の品目であり、後述する輸出の拡大にともなう生産額の増加の可能性は考慮されていない。11政府によると、他のTPP参加国の関税撤廃により、これらの国において日本の工業製品を輸入する際にかかる関税の減少額は最終年度で4,963億円となっている。このうち自動車と自動車部品の合計は2,890億円であり、全体の6割近くを占める。【参考文献】石川幸一・馬田啓一・高橋俊樹編著(2015)『メガFTA時代の新通商戦略』、文眞堂馬田啓一・浦田秀次郎・木村福成(2012)『日本のTPP戦略』、文眞堂経済産業省(2006)「通商白書2006」内閣官房TPP政府対策本部「TPP分野別ファクトシート」、内閣官房TPP政府対策ホームページ、2015年12月アクセス

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