政策・経営研究39号最終
35/99

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が日系企業活動にもたらす影響33TPPの源流は、2002年にメキシコのロス・カボスで開かれたアジア太平洋経済協力会議(以下APEC)首脳会議でチリ、シンガポール、ニュージーランドの3ヵ国間で交渉が開始され、交渉の途中で参加を表明したブルネイを加えた4ヵ国の経済連携協定に端を発する。当該4ヵ国はいずれも経済成長のために自国産品の輸出強化の重要性が高い国であり、各国が強みを持つ資源を軸に相互補完する意味合いが強かった。その潮目が変わったのは、2008年2月のアメリカ合衆国通商代表部代表(当時)のスーザン・シュワブ氏によるTPPに対する投資と金融の交渉への参加である。その目的は、中国のアジア大洋州における経済的・軍事的影響力の抑制にあり、具体的には2つの要因が推察される。1つ目は、アメリカ合衆国を発端としたサブプライムローンよる景気後退が鮮明となる一方、中国は引き続き高い経済成長を維持し、中長期的に経済力で脅威となる時期が早まる可能性が出てきたことである。この時期は、中国が2000年前半より対前年比で経済成長率二桁を達成し続けていた時期であり、アメリカ合衆国の政府当局としては、当該ペースが続けば、人民元高も相まってアメリカ合衆国に対する経済的台頭が早まると判断したと想定される。2つ目は、中国の経済成長は同国の軍事力の拡張をもたらし、尖閣諸島等、アジア大洋州における軍事的影響力を増大させていたことにある。アメリカ合衆国は2003年のイラク戦争以降、中東地域に軍事力を集中しており、その隙を突いて中国がアジア覇権を拡大していた。とりわけアメリカ合衆国にとって軍事的脅威と感じたのは、中国軍のアメリカ合衆国空母攻撃用の対艦弾道ミサイル(東風21)の開発着手と、ロシアから超音速長距離爆撃機バックファイアー(Tu-22M)の導入を表明した2007年にある。東風21が完成すれば、アメリカ合衆国の台湾戦略の見直しが必須となることに加え、中国軍がTu-22Mを保有することになれば、アメリカ合衆国本土空爆が現実味を帯びてくることとなった。アメリカ合衆国は、TPPの従来の枠組みを利用し、中国のアジア大洋州における経済的・軍事的影響力を排除すべく、南シナ海の安全保障を求めるベトナムや、経済的図表1 締結もしくは交渉中のメガFTAと環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の位置づけ出所:IMF、JETRO1TPPが注目される背景

元のページ 

page 35

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です