政策・経営研究39号最終
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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が日系企業活動にもたらす影響35て活動していると考えるのが妥当だろう。(1)TPPの特徴TPPは、メガFTAの枠組みとして、アジア大洋州では中国が主導権確保を握る東アジア地域包括的経済連携(以下RCEP)と比較されることが多い。そこで、RCEPとの相対比較の観点からTPPの制度的特徴を整理したい。①貿易自由化率の高さRCEPでは、一国の全貿易品目のうち、関税がなく自由に貿易できる品目数の割合である「貿易自由化率」が80%に留まることに対し、TPPは貿易自由化率が最高95%を超えることになる。ただし、日本を除く11ヵ国は99%以上の品目で関税撤廃する方針であり、日本の貿易自由化率は相対的に低く、大筋合意以降、日本の自由化率が変動する可能性につき留意する必要がある。②検討項目の包括性の高さTPPは、RCEP等従来のFTAの通商協定の枠組みで対象としてこなかった政府調達、環境、労働、国有企業等まで幅広く統一ルールを設けることで、よりグローバルスタンダードでの企業活動が求められることになる。これら枠組みは、どちらかと言えば新興国の企業活動ルールの向上を意図しており、たとえばマレーシアやベトナムにおける公共事業への外資系企業の入札参画や、国有企業の活動制限や民営化等にともなう国有企業活動領域への新規参入等、日系企業にとっても既存の国内ルールに近い形での新たな事業機会が生じることになる。(2)TPPの概要内閣官房TPP政府対策本部が2015年10月5日に公表した「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要」において、TPPの大枠の方向性が示された。大きくは「TPP協定の意義」「市場アクセス交渉の結果」「ルール分野の概要」の3項目から成るが、2016年2月のTPP参加表明国による署名以降、ルール分野の概要のうち、TPP交渉で示された方向性と、各国法制度との整合性の調整が重要論点となる。個別分野の詳細については各国の今後の合意形成が待たれるが、TPP制度の中でも最も経済活動に影響を及ぼすと想定される物品市場アクセス(関税率)に関する各種制度の概要は以下の通りである。①原産地規則の統一TPP特恵税率の適用が可能な12ヵ国内の原産地規則(物品の原産地「国籍」を明らかにすること)を統一することで、事業者の制度利用負担を緩和する。②自己証明制度の適用従来は事業者が国内の商工会議所で手続を行っていたが、TPP適用にともない輸出者、生産者、輸入者が自ら原産地証明書を作成することが可能となる。③付加価値基準(工業品等)工業品では付加価値基準が適用され、複数の締結国における付加価値の足し上げ・累積により、規定の水準を満たし、原産品として認可されやすくなる。そのため日系メーカーにとっては、TPP締結国内における既存の生産拠点の維持と同時に、TPP非締結国からの生産拠点移転可能性が見込まれる。3TPPの概要図表2 主要なメガFTA、AECの交渉参加国と交渉分野出所:JETROをもとに三菱UFJリサーチ&コンサルティング分析

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