政策・経営研究39号最終
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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が日系企業活動にもたらす影響37TPPは2016年2月に署名されて以降、各国国内手続が順調に進めば署名日から2年以内で正式発効する見通しであるが、そもそもTPP参加国は、国内手続を推進するうえでどのような状況にあるのだろうか。ここではTPP正式発効の鍵を握る主要国を中心に俯瞰していきたい。結論としては、アメリカ合衆国大統領選挙の行方次第ではあるが、アメリカ合衆国がTPP国内手続を完了することができれば、署名後2年以内での締結は実現性を帯びると見ている。(1)最重要国①アメリカ合衆国(2013年GDPの60.2%を構成)TPP締結に向けて想定されるリスクとして、2016年11月のアメリカ合衆国大統領選挙の行方が試金石となるだろう。共和党は、2016年5月3日の米中部インディアナ州予備選でドナルド・トランプ氏(以下トランプ氏)が勝利し、テッド・クルーズ氏が選挙戦からの撤退を表明し、トランプ氏が指名獲得を確実にした。民主党は依然として選挙戦が繰り広げられているも、ヒラリー・クリントン氏(以下クリントン氏)優勢の状況にあり、バーニー・サンダース氏による大逆転劇がない限りはクリントン氏が指名を獲得する見通しである。仮にトランプ氏が大統領に就任する場合、公約でTPPに反対を表明している以上TPPの正式発効は暗礁に乗り上げる可能性が高い。また、クリントン氏も当初TPP賛成の立場から翻って、雇用の増加、賃金の増加、安全保障の強化をTPP正式発効の3条件と位置づけている。クリントン氏が大統領に就任すれば、実務レベルで再びTPP正式発効を推進する声も聞かれるが、リーマンショック以降の堅調な経済成長や、ここ数年の失業率の改善、安定したインフレ率等マクロ指標を見る限りはアメリカ合衆国民の生活水準は豊かになる一方、所得格差の拡大による不公平感の是正に神経を尖らせざるを得ず、TPP正式発効に向けた慎重な舵取りが求められることには変わりないと思われる。②日本(同17.8%を構成)TPPの正式発効は、農林水産業の保護とのバランスを見極めつつも、中国の経済的・軍事的台頭にアメリカ合衆国と共同で対峙するうえで重要な政策課題と位置づけられる。ただし、足元アメリカ合衆国の大統領選挙の行方次第でTPPの検討方針が変わる可能性があることに加え、2016年7月に予定されている参議院選挙を控えて選挙公約からTPPの文言を外すなど、国内世論を見極めつつ慎重対応することが予想される。(2)重要国アメリカ合衆国と日本に加え、TPP正式発効の条件である「原署名国の2013年のGDPの合計の85%以上」を満たすうえで一定のGDPを達成しているカナダ、オーストラリア、メキシコのTPPを巡る足元の動きについても押さえていく必要がある。③カナダ(同6.6%を構成)自動車産業を中心に、総輸出額の約7割をアメリカ合衆国が占めるカナダにとって、NAFTAに次ぐ自由貿易圏への参画は、日本等アジアを中心に新たな市場を開拓するうえで有効な手段と評価されてきた。特に資源系の日本市場への輸出増への期待は高く、アメリカ合衆国大統領選挙の行方を横目で見つつも、基本的には産業界を中心にTPP加盟に前向きな姿勢を採っている。ただし、2015年11月に、それまでTPP加盟を推進4TPP正式発効に向けた主要国の国内手続概況図表6 TPP締結国における経済規模の割合出所:IMF「World Economic Outlook Database」

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