政策・経営研究39号最終
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環太平洋パートナーシップ(TPP)協定40季刊 政策・経営研究 2016  vol.3観点から、生乳の流通を農協(JA)が一手に担ってきたが、近年は政府規制会議で抜本改革が唱えられる等、TPPと同時並行で規制改革が進んでいる分野である。詳細な影響については、TPPと同時に規制改革の動向も踏まえる必要があるが、本稿では、あくまで現時点の要素を加味したうえで特に影響を受ける可能性がある品目として、「チーズ」「ホエイ」「飲用牛乳」の3点に焦点を当てたい。まず目を向けるべきは、国産チーズの生産量の減少可能性である。チーズは生乳に酵素を加えて凝固したものをカードとホエイに分離し、カードを熟成させたものが加工・販売されている。チーズは、乳を固めて発酵熟成させたナチュラルチーズと、ナチュラルチーズを原料としたプロセスチーズに大別されるが、TPPが正式発効すると、プロセスチーズの原材料として使用されるナチュラルチーズの関税29.8%が正式発効後16年目で撤廃され、より安価な海外産チーズが市場を席巻するようになる。加えてプロセスチーズの枠内関税40%もTPP正式発効後11年目で撤廃される見込みとなっており、そうすればチーズ産業全体で価格競争が激化し、収益性が悪化することが考えられる。国内チーズ事業者が収益性悪化によりチーズの生産量を減産することになると、連産品であるホエイも減産することになる。ホエイは国内市場の流通量が明確に把握されていない品目だが、生クリームの代替原料や、乳飲料(コーヒー牛乳、いちご牛乳等)に用いられることが多い。国内乳業メーカーは、チーズ等の一部製品分野での厳しい戦いに備え、生乳を加熱殺菌した飲用牛乳、およびはっ酵乳(ヨーグルト)、加工乳(低脂肪乳等)・乳飲料等の分野に注力する動きが見られる。特に牛乳のプレミアム化は足元で見られる顕著な動きであろう。ただ、国産ホエイが減少すると、輸入ホエイが増加し、ホエイを原料として使用する乳飲料の低価格化が進む可能性がある。乳飲料は、飲用牛乳と末端消費価格差で一定水準が維持されているため、乳飲料の低価格化は、結果的に飲用牛乳の低価格化をもたらし、当該品目でも低収益化につながる可能性がある。海外ホエイは、タンパク質含有量25%未満のものが図表8 TPP批准にともなう影響想定品目別将来展望仮説出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング分析

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