政策・経営研究39号最終
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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が日系企業活動にもたらす影響41TPP正式発効後16年目、45%以上のものが同6年目に撤廃される等、時限措置が設けられているが、長期的にこれら安価なホエイが流通するようになれば、経営資源を高付加価値分野に振り向けたはずの戦略そのものが成り立たなくなり、乳製品業界全体が厳しい環境に置かれることとなるだろう。③小麦分野小麦分野については、小麦農家、製粉(加工)事業者といったサプライチェーン全体で影響を受ける可能性が想定される。TPP交渉により、輸入小麦に対する枠内関税は維持されることとなったが、マークアップが45%削減されることとなった。マークアップとは、国産小麦農家の経営所得安定対策のための財源として使用されており、国産小麦農家の保護という観点では関税と同義である。近年のマークアップは年間約800億円であるが、この約半分が削減されるとなると、国産小麦農家の経営基盤が弱体化し、結果的に国産小麦の生産量が減少し、結果的に海外小麦に依存せざるを得ない構造となる。加えて製粉メーカーは、国産小麦よりも調達量や品質が安定している海外産を好む傾向が強く、国産小麦農家の減少により政府への影響力が減少すれば、自然と海外小麦の優位性が高まることとなるだろう。また、製粉・加工分野では、大口市場でかつコモディティ的要素の強いスパゲティ、マカロニの重量税がTPP正式発効後9年間かけて段階的に削減されることから、競争環境の激化が予想される。すでに製粉業界は高度経済成長期の400社超から、足元では約50社程度に集約されているものの、これら小麦、製粉両分野で価格下落圧力が強まれば、さらなる業界再編は避けられない。業界最大手の日清製粉でこそ2013年のニュージーランドのチャンピオン製粉の買収や、2014年のカーギルグループ等からアメリカ合衆国4製粉工場の買収を実施する等、海外調達先の強化を進めているが、日清製粉以外で調達拠点拡充に向けて積極的な投資を進めている企業は限定的である。(3)海外企業活動への影響可能性海外企業活動については、国内企業活動の重点5品目のように、特定品目・分野にその影響を絞ることが難し図表9 主要な食品類のベースレートと撤廃時期(出し地:日本、仕向地:米国)注:生鮮食品、加工食品の内、米国向けのベースレートが10%以上の品目に絞り込みの上表示出所:経済産業省ホームページを基に三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

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