政策・経営研究39号最終
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環太平洋パートナーシップ(TPP)協定44季刊 政策・経営研究 2016  vol.3そのため、国内産業への影響見極めと同時並行で、先行して生産拠点としてのベトナムや、調達先としての先進国への機能移転等を鑑みつつ、バリューチェーン全体で生産コストの削減余地を検討していくことがより重要となる。これらの取り組みに関しては、現在は企業体力のある大手食品加工メーカーに限られているが、中長期的には中堅・中小食品加工事業者同士が調達コスト削減を目的とした海外調達先との提携等の動きが現れることも想定される。自動車分野では、コスト削減の観点からサプライチェーンを再考するうえで、「一大生産拠点としてのメキシコ」「タイのTPP加盟可能性とその時期」をどうとらえるかが重要になるだろう。具体的には、すでにメキシコへの生産拠点移設・強化が進む中、日系自動車産業が集積しており、TPP締結国内に生産拠点が移転する可能性を懸念するタイが本気でTPPに加盟してくるか、その動向について注視する必要がある。また、アパレル分野については、TPP域内のみで鑑みると、中国からの生産拠点シフトが進むベトナムに利があると考える。ただし、アパレル分野はワーカー賃金の変動に影響を受けやすく、仮に食品加工分野等も含めてベトナムの軽工業分野への投資が相次ぎ、ワーカー賃金が一気に上昇するようなことがあれば、ミャンマーやバングラデシュ、スリランカ等TPP未締結国でも、総合的に製品コストの安価な国に生産拠点をシフトしていくことも想定されるため、中長期的な賃金動向を視野に入れた生産拠点配置が重要となるだろう。2016年11月のアメリカ合衆国大統領選挙に向けて、当国におけるTPP国内手続のスタンスが不透明となっているため、足元では各国の国内手続の進捗がトーンダウンをした印象を受けている。ただ、現実にTPPが正式発効すれば、関税撤廃時期は品目によって異なるものの、徐々に影響が及んでくることを避けられないのは間違いなく、本稿を通じ、日系企業が中長期的にサプライチェーンのあり方を検討されるうえでの一助となれば幸いである。【注】1TTIPとは、EUとアメリカ合衆国の包括的貿易投資協定(Transatlantic Trade and Investment Partnership)の略称

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