政策・経営研究39号最終
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環太平洋パートナーシップ(TPP)協定48季刊 政策・経営研究 2016  vol.3に影響されることには注意が必要だが、リーマンショックが与えた影響は国・地域によってさまざまであることが分かる。結果として、リーマンショック後にそれぞれ模索していかなければならない立ち位置も異なるものとなってこよう。まず、米国はリーマンショックの震源地であり、リーマンショック後の成長率は一時減速したのだが、その後はリーマンショック前と同様に底堅い成長を保っている。これに対して欧州は、ユーロの導入に加えて欧州統合の拡大や深まりを背景に存在感を増し、GDPの規模は米国を上回るようになったが、リーマンショック後は経済の減速が続いており、2015年のGDPの規模はユーロ安による影響もあって、10年に比べて縮小し米国を再び下回っている。中国もリーマンショック後の経済成長ペースは低下しているが、それでも10年間でGDPが倍増するペースでの成長が続いており、また人民元が上昇傾向で推移していたこともあって、中国経済の存在感は急速に拡大している。ちなみに、インドは世界第9位の経済大国であり、生産年齢人口比率もまだ上昇しており、今後も高い成長が期待されている。しかし、GDPの規模比べてみると10年前の中国経済の規模にすぎない。(2)米国は世界経済のエンジンではない米国はリーマンショックの震源地であったにもかかわらず、経済成長の減速は一時的なものにとどまり、その後はしっかりした成長軌道を維持している。この理由としては雇用の回復が挙げられる。米国では個人消費がGDPの7割を占めており、雇用者数が拡大を続けていれば、個人消費も着実に増加して経済成長を牽引する。米国の失業率は、リーマンショック前は4%台前半で推移していたが、リーマンショックを経て2009年10月には10%まで上昇した(図表4)。しかし、その後の失業率は低下傾向を続け、現在は5%前後とほぼ完全雇用の状態となっている。また、雇用者数の増減を見ると、リーマンショックを挟んで大きく減少したが、2010年になって増加基調に転じ、その後6年間ほぼ一貫して増加が続いている。図表4に示されたリーマンショック前後の雇用者の減少(08年から09年の逆三角形の部分)は合計すると900万人近くに達したが、その後の雇用者数の増加(10年中ごろからの増加)を合計すると1400万人を超えており、リーマンショック前後の雇用者の減少数を大きく上回っている。このように雇用が回復して経済も底堅く推移している図表3 世界の主要国・地域のGDPの推移出所:世界銀行、国際通貨基金

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