政策・経営研究39号最終
52/99

環太平洋パートナーシップ(TPP)協定50季刊 政策・経営研究 2016  vol.3ある。(3)統合の熱気が冷めた欧州リーマンショック前までの欧州経済は、共通通貨ユーロの導入に象徴される統合の熱気の中で、比較的高い成長を遂げてきた。また、統合の内容も経済的な結びつきが一段と深まり、政治統合の色彩が濃くなってきた。しかし、リーマンショック後の欧州は、ショックの震源ではなかったものの、世界的な金融市場の混乱の影響を大きく受け、経済活動にもマイナスの影響が広がった。ユーロ導入国の中でも特にギリシャ等周縁国の経済が変調をきたし、国債の信用力が低下する等、財政・金融不安が広がってくると、欧州経済の低迷は一段と深刻になったようだ。こうした欧州経済の変調は、共通通貨ユーロの価値の変動によく現れている。導入以降リーマンショック前まで価値が増価していたユーロだが、リーマンショック後は減価基調を続けている(図表6)。統合によって米国に匹敵する経済規模をものにし、共通通貨ユーロの導入で統合のエネルギーを高め、世界経済における存在感を高めた欧州であるが、統合によるひずみが顕在化する中で成長のエネルギーが減じているようだ。リーマンショック後の欧州は、広がりすぎた、あるいは深まりすぎた統合のひずみに悩まされる状況が続いており、こうした状況はこれからも続くだろう。財政健全化をめぐるEUとギリシャの対立、英国のEU離脱の動き等は、統合を後退させる流れが広がっていることの表れと言える。統合の推進というエネルギーを失った欧州は、ギリシャ等周縁国の問題や英国のEU離脱問題等を抱えたまま、まずは経済・金融の安定化を図ることが課題となっている。ギリシャの問題は解決していない。ギリシャ政府(国民)はこれ以上の財政緊縮に対して生活水準が低下するとして反発が強い。一方、IMFやEUは無条件で支援を続けるわけにはいかないので、緊縮を求めてくる。ギリシャの経済成長力が弱いことを考えれば、問題は簡単に解決しそうにない。一方で、ギリシャ国債の信用不安が再燃しても、その広がりを防ぐ仕組みができている。具体的には各国政府の合資により設立された欧州安定メカニズムであり、ECB(欧州中央銀行)が準備した国債の無制限買取プログラムである。どちらも発行市場や流通市場から国債を買入れることができる。つまり、ギリシャのリスクを民間金融図表6 ユーロの価値の変動に表れる欧州経済の変調出所:日本銀行、FRB

元のページ 

page 52

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です