政策・経営研究39号最終
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なぜTPPが必要なのか51機関ではなく公的機関が引き受けることによって、数年前に起きたような金融システム不安、財政・金融不安の再燃を防ぐことができる。英国のEU離脱問題も簡単に決着がつく問題ではない。残留・離脱の賛否を問うた国民投票は、英国国民が統合に参加することがプラスに働くという考え方と政治的統合に組み込まれることを嫌う考え方とに二分されていることを明らかにした。離脱を政治的に決定する議会の議員の多くは残留を支持していた。辞任するキャメロン首相の後任はメイ氏に決まったが、離脱を正式に決定し、EUへ通告する日程もまだはっきりしない。離脱交渉も難航が予想される。離脱後もEUと英国との間で新たな枠組みを模索することになるであろうが、できれば統合のメリットは残したい英国と離脱した方が得だという前例を作りたくないEUとの間で厳しい交渉となりそうだ。結論の見えない長期の交渉になるであろうという不透明感、そして英国経済にすぐに現れそうなマイナス効果の予感とが相まって、金融市場は大きく変動した。しかし、それでも金融市場の混乱が欧州や世界経済全体に広がらないようにする危機管理が、各国中央銀行による資金供給を含めて準備されている。離脱問題はしばらくは不確定要因として注意が必要であるが、金融市場の混乱はひとまず収束し、危機的状況に陥ることは今のところ回避されている。もっとも、危機を回避できたとしても、リーマンショックを経て、欧州が統合の進展を成長のエネルギーにすることが難しくなったことに変わりはない。停滞が続く中で経済の安定を実現するというのが、リーマンショック後の欧州の立ち位置のようだ。ユーロ圏の失業率は2012年ごろの12%から今は10%程度に低下してきているが、相変わらず高水準だ(図表7)。周縁国であるスペインの失業率はピーク時の26%からかなり低下してきたが、それでもまだ20%程度だ。リーマンショック後の欧州経済の状況は、緩やかに低下しているものの高水準で推移している失業率に象徴されていると言えよう。(4)存在感は増したが、成長率は低下する中国リーマンショックまでは成長率が上昇トレンドにあった中国であるが、リーマンショックを経て経済成長率は低下トレンドに転換した(図表8)。リーマンショック直後は4兆元の経済対策を打ち出して経済成長率を高める図表7 低下しても依然として高水準である欧州の失業率出所:ユーロスタット

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