政策・経営研究39号最終
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環太平洋パートナーシップ(TPP)協定52季刊 政策・経営研究 2016  vol.3ことに成功したが、その対策が結果として過剰供給力の問題を生み、経済政策は引き締めモードに転換した。その後は引き締めの影響もあって経済成長ペースは減速が続いている。こうした中国経済の減速は一時的なものではなく、構造的な変化ととらえるべきだろう。世界経済が高い成長を遂げている時には、安い労働力を活用して世界の工場として成長していくことが可能であった。中国での投資機会を求めて海外から資本が流入し投資主導で高い成長を遂げることができた。しかし、世界の経済成長率が減速し、中国の供給力の拡大を吸収できるだけの需要の受け皿がなくなった。同時に中国国内で人件費が上昇し、国際競争力が低下してくると、これまでの成長メカニズムが働かなくなってきた。投資主導の高度成長が終わりを告げると、個人消費主導の成長に移行してくる。かつての日本経済がそうであったように、この経済構造の変化は成長力の低下をともなうものである。特に中国の場合は、すでに見たように、2010年ごろには生産年齢人口比率が低下に転じており、消費主導の成長力は強くない。中国経済の減速が構造的な流れになっているところで4兆元の対策を打ち出しても、一時的な景気の過熱を生むだけで、供給力の過剰という大本の問題は一層深刻になってしまった。中国政府は、このようなリーマンショック後の経済環境の変化を十分に認識していると思われる。今年採択された第13次5ヵ年計画(2016~20年)では「小康社会」を20年までに達成させるとしている。小康社会とは、ゆとりのある社会という意味であり、高成長ではないが安定的な成長を目指すという意味合いがあると考えられる。小康社会という言葉はかなり前から使われていたものだが、第12次5ヵ年計画でも2020年の小康社会実現が目標として掲げられている。これに合わせる形で胡錦濤主席(当時)は、20年のGDPを10年の2倍にすることを目標として示した。10年間でGDPを倍増するというと、日本の所得倍増計画を連想して高度成長を目指すというイメージを抱いてしまうが、そうではない。2010年の中国の実質経済成長率は10%台であり、胡錦濤主席によってGDPを2倍にするという目標が掲げられた11年の成長率も9%台であった。10年間でGDPを2倍にするためには年平均で7%程度の成長を続けていればよい。つまり、この目標を掲げたということは、経済成長率が低下していくこ図表8 リーマンショック後に低下トレンドに入った中国の経済成長率注:棒グラフは前年同期比、折れ線グラフは前期比・年率換算出所:CEIC

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