政策・経営研究39号最終
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なぜTPPが必要なのか57一巡した2009年以降、個人消費はしっかりと拡大を続けた。前述の通り輸出主導の景気回復が難しくなる一方で、個人消費が景気の下支え役を果たしていたことになる。意外な感じがするかもしれないが、実質雇用者報酬もリーマンショック後一時的に落ち込んだものの、その後は回復している。個人消費の拡大は雇用者報酬の動きに連動したものであり、その意味においては不思議なことではない(図表14)。もっとも、名目の雇用者報酬は実質ほど増えていない。リーマンショック後にボーナスの削減、雇用調整等によって名目雇用者報酬は大きく減少した。その後ショックの影響が落ち着くにつれて、1人あたりの名目賃金は下げ止まり、雇用者数の増加につれて名目の雇用者報酬も拡大したが、拡大ペースは緩やかである。実質の方が雇用者報酬の伸びが高いのは、デフレが続いていたため実質の雇用者報酬が物価下落分だけ名目よりかさ上げされることになったからだ(図表15)。リーマンショック後、世界的にインフレ圧力が後退し、日本ではデフレが続いていた。また、世界経済が減速する中で輸出市場においては、競争力を高めた新興国との競争が一段と厳しくなっていた。こうした状況下で賃金を上げることは難しい。賃金がほぼ横ばいで推移する中、物価の下落が実質所得を拡大させ、消費の増加を可能にしたと言えよう。最近、個人消費が弱いという指摘がなされているが、消費増税前の駆け込みを除けば、個人消費は2013年ごろから弱さが現れているのではないか。8%への消費増税の影響が残っているとか、節約志向が広がっている等、さまざまな理由が挙げられているが、実質雇用者報酬が伸び悩むにつれて、個人消費も頭打ちになっていると考えるのが自然であろう。名目の雇用者報酬の増加ペースが高まる一方で、実質の雇用者報酬が伸び悩んでいるのは、物価が上昇しているからである。デフレを前提にした経済活動が続く中で、物価上昇に対する脆弱性が高まっているのではないか。これについては後ほど検討する。(3)設備投資の回復は緩やか設備投資もリーマンショックによって大きく減少した。輸出や個人消費が2009年初めを底に回復してきたのに対して、設備投資が底打ちしたのは2010年になってからであった。底打ちした後は増加基調を続けているが、そのペースは緩やかであり、いまだにリーマンショック前の水準を下回っている(図表16)。経常利益が過去図表15 デフレによって押し上げられていた実質雇用者報酬出所:内閣府「国民経済計算年報」

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