政策・経営研究39号最終
60/99

環太平洋パートナーシップ(TPP)協定58季刊 政策・経営研究 2016  vol.3最高水準で推移しているのに、設備投資がなかなか元に戻らない。「日本企業はお金をため込んでいる」、「もっと積極的に投資すべきだ」といった意見も聞かれる。しかし、企業は、利益が出たから設備投資をするのではない。利益が見込めるから投資をするのだ。「設備がフル稼働なので設備の増強が必要だ」、あるいは「この新商品を導入すれば投資に見合うリターンが得られる」。そうした経営者の見極めがなければ、設備投資は出てこない。投資を行うという決断があって、その次のステップとして投資資金の調達が問題になってくる。この時、利益が出ていれば、借り入れをしなくても投資ができるので、投資がしやすくなるのだが、「利益の増加=投資の拡大」というわけではない。かつて経済成長率が高かった時は、投資機会が豊富にあり、資金の調達に目途が付けば投資が実行された。そういう時代であれば、利益の拡大に応じて設備投資が拡大したはずだが、今は投資機会を見つけることが難しくなっている。まず設備稼働率が低い。図表17は、設備稼働率の推移を見たものである。リーマンショック前には設備稼働率が90%程度に達しており、設備投資が拡大する環境であった。リーマンショック後に50%台半ばまで大きく低下した設備稼働率は、その後持ち直したものの、2010年以降は70%台後半、ほとんど横ばいで推移している。この水準では生産能力を増強しようといった投資はあまり出てこない。まして、徐々にではあるが生産能力が低下しているにもかかわらず、設備稼働率が上がってこないのであれば、なおさら生産能力を拡大するような設備投資には踏み切りにくい。新たな製品を投入するための投資は設備稼働率とは関係なく出てくるが、新興国の競争力が質・量ともに高まっている中、新製品の開発における競争も当然のごとく厳しくなっている。かつてのように大量生産につながるような新製品はなかなか出てこないので、設備投資の規模も小さくなってくる。また、新製品の導入当初は国内で生産していても、いずれマーケットに近い海外で生産することになる。設備投資をするにしても、国内ではなく海外でという状況はこれからも続くだろう。もっとも、国内での設備投資が減少しているというわけではない。設備投資が抑制されているため、既存の設備の使用年数が長くなっている。図表18は、生産設備の保有期間別の構成比を示したものだが、2013年は94年と比べると保有期間が5年未満の新しい機械の割合が減る一方で、15年以上保有している機械の割合が高まっ図表16 設備投資:非常に緩やかな持ち直しが続いている出所:内閣府「四半期別GDP速報」

元のページ 

page 60

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です